最新記事

日本経済

個人事業主やフリーランスは廃業の危機!? 多くの団体が「インボイス制度の延期を」と訴える根本理由

2022年11月25日(金)17時20分
山田真哉(公認会計士・税理士・作家) *PRESIDENT Onlineからの転載
書類を見つめるシニア男性

インボイス制度でフリーランスは廃業の危機に?(※写真はイメージです) Kiwis - iStockphoto


日本商工会議所をはじめとして、多くの団体が「インボイス制度導入」の延期や反対を訴えている。公認会計士の山田真哉さんは「フリーランスにとっては増税・売り上げ減となり、なにひとつメリットがない。企業にとっても余計な手間が増えるなどデメリットが大きい。少なくとも2023年10月の開始は避けるべきではないか」という――。


「インボイス制度を理解している」わずか14%

2023年10月から消費税のインボイス制度が開始されますが、本当にスタートできるのでしょうか。

私のYouTubeチャンネル「オタク税理士ch」でも詳しく解説しましたが、あらためてこの問題について簡単に解説したいと思います。

freeeの調査によると、インボイス制度を理解している個人事業主はわずか14%、インボイス制度について取引先と協議を進めている個人事業主に至っては、たった12.6%しかいませんでした。

あと1年でインボイス制度が始まるのに、どうするか決めていない人がほとんどだというのです。

非常に分かりにくい「インボイス」の意味

多くの方が混乱しているのが、この「インボイス」という名前が、制度名でもあり、また「適格請求書」のことでもある、という点です。

インボイスとは、英語では単に「請求書」という意味です。しかし、日本でいうインボイスは、今回の「インボイス制度で適用する請求書」の意味です。

この「インボイス制度で適用する請求書」とは、これまでの請求書やレシートに、消費税率が8%なのか10%なのかを記載し、また各事業者ごとに振られた「登録番号」を明記したものです。これを「インボイス」と呼びます。

この時点で、すでに意味が分からなくなった方も多いと思います。

消費税は「納税者に酷な制度」

なぜ、いまインボイス制度が導入されるのかを説明するために、まず消費税のしくみについて簡単にご説明します。

図表1の真ん中の青年が個人事業主だとします。

彼が仕事をして、取引先の会社から1万円もらった場合、消費税10%をもらい、計1万1000円をもらいます。

彼は仕事の経費として2000円を支払いました。これにも消費税10%がつくので、支払ったのは計2200円です。

図表1 消費税のしくみ

筆者作成

消費税の計算では、1年間でもらった消費税から、払った消費税を引いて、その差額を税務署に納めます。

なので、彼はもらった消費税1000円から、支払った消費税200円を引いた差額の800円を税務署に納めることになります。

1年間に行う取引が多いと、この計算が非常に大変になります。

そのため、消費税は納税者に酷な制度だと言われています。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ビットコイン再び9万ドル割れ、一時6.1%安 強ま

ワールド

プーチン氏、2日にウィットコフ米特使とモスクワで会

ビジネス

英住宅ローン承認件数、10月は予想上回る 消費者向

ビジネス

米テスラ、ノルウェーの年間自動車販売台数記録を更新
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業界を様変わりさせたのは生成AIブームの大波
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    「世界で最も平等な国」ノルウェーを支える「富裕税…
  • 7
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 8
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 9
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 10
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中