最新記事

ビジネス

IQより重要なEQとは? 人生の勝負を決めるのは「社会に出て活躍する力」だ

2022年11月1日(火)16時55分
永守重信(日本電産 代表取締役会長) *PRESIDENT Onlineからの転載

EQの高い人が求められる時代に

ところで、人間の能力には知能指数の「IQ」と感情指数の「EQ」の2つがあるといわれている。

IQ(Intelligence Quotient)の高い人は知能が高いため、当然、学校のテストでは有利になる。これまでの日本企業でもIQの高い人材が重宝されてきた。

しかし、IQの高い人材が社会に出て成功するとは限らない。医学部試験に受かった人が必ず立派な医者になるわけではないし、有名大学の卒業者だけが会社に入って売り上げをあげたり、新製品を開発したり、リーダーシップを発揮できるというわけではない。

特に今は昔とは経済環境が激変しており、単に頭の良い人が成功する、あるいは性能の良い製品をつくりさえすれば売れるという時代は終わっている。

こうした時代の変化とともに、企業の求める人材も知能が高いだけの人材から、人間としての総合力が高い人材に変わってきている。つまり、EQ(Emotional Intelligence Quotient)の高い人である。

「人間力」が今こそ必要だ

EQとは感情の豊かさを表す能力のことで「心の知能指数」とも呼ばれているが、意欲や矜持(きょうじ)を生み出す原動力になるものであり、まさに人間力といえるだろう。

一般にEQが高い人は行動や言葉によって人を感動させることができ、また共感能力にも優れている。困難な課題にぶつかったときにも、身体中からほとばしるような熱意で、最後までやり抜くことができる。

「このことなら他の誰にも負けたくない」「この分野では絶対に一番になる」という情熱や、自分は必ずやり遂げるという矜持、できるまでやるといった粘り強さなどもEQによるものだと私は考えている。大学卒業後、社会に出た後はこうした力を持った人が多く成功している。

今後、AI化が進めば、こうした人間力がより必要とされるようになるはずだ。

IQは伸ばしにくいが、EQは後天的に伸ばせる

覚えておいてほしいのは、「EQは努力や経験によって後天的に伸ばせる」ということである。

IQには遺伝的な要因が大きく影響しているため、努力しても簡単には上がらないという。一方、EQは遺伝などの先天的要素が少なく、経験や学習、努力によって上がっていく。いわば人間の筋肉のようなもので、鍛えれば鍛えるほど上がっていくのだ。

これまで多くの従業員や経営者を見ていて実感するのは、IQなどの能力的な差が生み出す成果の差は、どんなに頭がいい人でも普通の人のせいぜい5倍程度だということである。

しかし、EQの高い社員とやる気のない社員の成果の差は100倍以上にもなることがある。いや、もしかしたらそれ以上かもしれない。

買収企業はリストラではなく、従業員教育で立て直す

私は創業当初から従業員の育成について熱心に取り組み、社内にもいろいろな塾や経営人材育成プログラムなどをつくって人材を育ててきたが、EQの高い社員は学べば学ぶほど、意識が変われば変わるほど、その潜在能力を伸ばし、成果をあげることを実感している。

たとえば、こんなこともあった。会社ぐるみで変わった例である。

我が社では別の企業を買収するときも原則としてリストラはせずに立て直すが、その際はいつも従業員を教育することで会社を立て直してきた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中