社会を変えるのは、実は「風見鶏」タイプの人──ハーバード大学「権力の授業」より
POWER, FOR ALL
理由は、工場の機械がよく壊れるから。故障が発生すると作業ラインが止まり、作業目標が達成できないだけでなく、従業員の給料にも響く。
機械を修理できるのはメンテナンス担当者だけで、彼らも修理のノウハウという希少価値の高いリソースを有するのは自分たちだけだと分かっていた。彼らは重要な情報を囲い込んだ。記録を残すことも、修理マニュアルを作成することもなかった。
このエピソードから分かるように、組織にとって重要なリソースを支配していれば、公式の役職が示唆する以上のパワーを持てる場合がある。
パワー相関図を作る
新たな役割を担った、新たな目標を設定した、組織改革を進めたい、などの理由で影響力を強めたい局面でカギとなるのは、「補佐官」にふさわしい人物を見極めることだ。
変化への抵抗感を乗り越えるには、表向きの上下関係のベールを剝がして、メンバー同士の人間関係を把握し、以下の質問に答えて詳細な「パワー相関図」を作成する必要がある。
身近な人間関係や組織、企業、業界、あるいは特定の職業などの集団において、誰が強大なパワーを有している? 彼らが重視するリソースは何? 各メンバーはどんなリソースを持ち、そのアクセス権をどの程度支配している? 仲良しグループや派閥はある? そして、あなたと各メンバーとの関係は?
ただ、本気で変革を主導しようと思ったら、パワーを持つ人を特定するだけでは不十分。あなたの改革案を彼らがどう思っているかについての情報も含めた相関図が必要となる。
影響力の大きい人物──変化を受け入れるよう周囲を説得でき、改革の成否を分けるキーパーソン──には、大きく分けて「支援者」「抵抗勢力」「風見鶏」の3つのタイプがある。
「支援者」は変革に前向きの、「抵抗勢力」は後ろ向きの人々。そして、「風見鶏」は変革に功罪両面があると感じ、意見を決めかねている人だ。
では、変革を実現するために助けを求めるべき相手、信頼関係を築いて、距離を縮めるべき相手は、どのタイプだろうか?
実のところ、密接な関係を築くべき唯一の存在は「風見鶏」だ。「風見鶏」の人々との接近には状況を一変させる力がある。
変革者にとっての鉄則は「風見鶏」への対応に集中すること。ターゲットは個人的に親しい関係にあり、かつ改革案への見解が定まっていない人。この定義に当てはまる人に、変革の必要性を訴えかけることに時間とエネルギーを集中させよう。
パワーは「万人のもの」
ブラック・ライブズ・マター、香港の抗議運動、#MeToo、フランスの黄色いベスト運動、アラブの春──これらは過去10年ほどの間に、社会変革を求めて大勢の人々が立ち上がり、多大な注目を集めた社会運動の一部だ。ソーシャルメディアが普及したおかげで大きな話題となったため最近の現象に思えるかもしれないが、そんなことはない。