自分で成長を止めないで...「このまま終われるか!」から始まる生き直し戦略
「難しいことをわかりやすく」、キャリアに一番影響を与えた本
── 河合さんがこれまで読まれた本を振り返ってみて、ご自身のキャリアに影響を与えた本を紹介していただけますか。
小学生向けのお天気図鑑です。小学生の頃アメリカに住んでいた関係で、高校の現代国語では、日本語の長文を正確に理解するのが難しい場面がありました。一方で、天気の世界に入ったものの、空を4年間も飛んでいたのに、「なぜ、地上が雨でも、離陸後3分もすれば青空になるのか?」「なぜ、赤道付近で飛行機は揺れるのか?」がわからなかった。そこで小学生もわかるお天気図鑑で勉強を始め、手書きの「穴あけ問題集」をつくって自学自習をしました。天気の図鑑って、難しいことを子どもでもわかるように説明しているんです。子供向けの図鑑が理解できれば、難しい気象学の本や物理式も理解できる。気象予報士の試験も、子供向けの図鑑がきちんと理解できれば合格できます。
気象予報士として「ニュースステーション」に出演することになったときも、とにかく「視聴者にわかりやすく伝えよう」と心がけました。専門的な内容を、簡単な言葉で伝える。この大切さを教えてくれた天気図鑑は、本の執筆はもちろん、自分自身のキャリア自体に大きな影響を及ぼしてきているように思います。
── 河合さんはビジネスパーソンへのインタビュー時に「あなたにとっての仕事とは何か」と尋ねているということでした。河合さんにとっての仕事とは何ですか。
仕事は「背中にいれたものさし」のようなものですね(笑)。背筋をまっすぐ伸ばすように強制してくれるものさしがなかったら、私はだらだら過ごしていたような気がします。ものさしがあるから、自身と向き合えたし、周囲の人たちに貢献しようという気持ちが湧いてきた。ものさしがあるから、学び続けることができたし、愛をケチらずにすみました!これからも学びつづけなきゃ、って思っています。
コロナの時代は自分の原点に立ち返るきっかけにもなりました。今後も目の前の仕事を一つ一つきちんきちんとやっていく。それを継続していくことで新しいものや「これをやりたい」というものに出会えると思っています。
河合薫(かわい かおる)
健康社会学者(Ph.D.)、気象予報士。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。2004年東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、2007年博士課程修了。産業ストレスやキャリア発達、健康生成論の視点から調査・研究を進め、働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は約900人に上る。
著書には『コロナショックと昭和おじさん社会』『他人の足を引っぱる男たち』『他人をバカにしたがる男たち』(以上、日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)などがある。
flier編集部
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