人を動かすには付きものの「4つの壁」と、その乗り越え方を知る
── 本書でも「上司への承認依頼」がケーススタディ形式で紹介されていました。
はい。どんなケースかというのをちょっとご紹介しますね。
あなたの役職は法人営業部の課長。自社の業績を伸ばすために、部を挙げて新規開拓に注力せよと言われています。
あなたは、新規開拓が進まない原因を「営業担当がお客様の情報をろくに調べず、どんな会社にも同じトークをしているから」だと分析しています。「企業情報の詳細なリサーチが可能なサービス」(費用は年間60万円)を会社で導入すれば売上アップにつながるので、部長に社内稟議を上げてほしい──。そう考え、部長と30分打ち合わせすることになりました。
部長は、あなたとの関係は悪くありませんが、細かいところに気がつき突っ込んでくる性格。「営業は本人のマインドや取り組み姿勢がすべて」という持論の持ち主です。
── ありそうな場面です。高橋さんのメソッドなら、どのように部長とコミュニケーションをとりますか。
上司に提案を持っていく前に、まずは3つのポイントについて考えてみることをお勧めします。
(1)ゴール(どんな台詞がもらえたら、この場は成功なのか)
(2)壁(どんな疑問や反論が出てくることが予想されるのか)
(3)対応策(壁をどうやって乗り越えるか)
ここでは、考えられる限りの壁を洗い出しておくことが重要です。いざ上司に話を持っていったときに、想定していなかった突っ込みがあると、話が止まってしまいますから。
冒頭でご紹介した通り、「壁」には4種類あります。部長との関係は悪くないということですから、「関係性の壁」をのぞいた3つ、「情報整理の壁」「思い込みの壁」「損得勘定の壁」について考えておくといいでしょう。
── 4つの壁をフレームワークとして使って、入念に準備しておくんですね。
準備しておくと、安心してその場にのぞめます。
「壁」のことを考えておかないと「絶対にOKをもらうぞ」「自分がどんなに入念に検討したかアピールしよう」というふうになってしまうかもしれない。
でも上司が知りたいポイントはそこじゃないですよね。上司の立場に立って「こういうところが気になるのではないか」という目線で考えると、また違った準備ができるはずです。
オンライン時代だからこそ、同僚のことをもっと理解できる
── コロナ禍において、「関係性の壁」に悩む方も多いのではと思います。同僚の中には、まだ直接顔を合わせたことがない人がいたり......。
「在宅勤務になって、同僚のことを理解しづらくなった」という声も、たしかによく聞きます。しかしオフィスに出社していたときも、相手のことを完全に理解できていたとは言えないのではないでしょうか。