最新記事

未来をつくるSDGs

「今や米欧中で理念をめぐって争う時代、だからSDGsが必要不可欠になった」

A New Age of Ideals

2022年3月4日(金)16時20分
朴順梨(ライター)
竹下隆一郎

新しい経済コンテンツ企業PIVOTの執行役員、竹下隆一郎氏 Tomohisa Tobitsuka for Newsweek Japan

<元ハフポスト日本版編集長で『SDGsがひらくビジネス新時代』著者の竹下隆一郎氏にインタビュー。「SDGsの盛り上がりはSNSが一役買っている」「企業は勝つためにSDGsに取り組む必要がある」。どういうことか>

SDGsがうたう17の目標は正しいと思うけれど、なんとなく腹落ちしない。それどころか、環境保護や平等を訴える誰かを見るとなぜかイラっとする──。

そんな人は、実は意外と多いのではないだろうか。

しかし「これからのビジネスは、待ったなしでSDGsに取り組む必要がある」と、元ハフポスト日本版編集長で、現在は新しい経済コンテンツ企業PIVOTの執行役員、竹下隆一郎氏は言う。

良いモノを作れば売れる時代は終わり、「これからは理念をめぐる争いになる。その勝者になるために必要不可欠なのがSDGsへの理解」と言うが、どういうことなのか。ライターの朴順梨が聞いた。

◇ ◇ ◇

――竹下さんは昨年『SDGsがひらくビジネス新時代』(ちくま新書)を出版した。本を書くきっかけは?

ハフポスト日本版で何度も取り上げたSNSを総括したい気持ちがありました。また、年々SDGsが盛り上がっていきましたが、それにSNSが一役買っている。

ネットメディア編集者の視点で両者の結び付きについて本にまとめたいと思ったのです。

mookSDGs20220304invu-2.jpg

竹下隆一郎(Ryuichiro Takeshita)/1979年生まれ。慶應義塾大学卒業後、朝日新聞で経済部記者、デジタルメディアの新規事業を経験。米スタンフォード大学客員研究員を経て、2016~21年にハフィントンポスト(後にハフポスト)日本版編集長。退職後、元NewsPicks編集長の佐々木紀彦氏らと共に経済コンテンツ企業PIVOTを創業 Tomohisa Tobitsuka for Newsweek Japan

――SDGsとSNSが結び付いた具体的な例を知りたい。

2016年2月、「保育園落ちた日本死ね」という匿名ブログがバズり、国会でも取り上げられました。特定の団体や政党ではなく、個人の意思が国を動かす力になった。

例えば「食料品が値上げされるというニュースを紹介するために、困っている消費者を探し出す」というように、これまでのメディアは個人をパーツとして扱っていた部分がありました。

しかし、個人の小さな声が社会を動かす力になることを実感し、個人の声に注目するようになりました。

mookSDGs20220304invu-3.jpg

Tomohisa Tobitsuka for Newsweek Japan

――なぜ個人の声に注目を?

かつての日本では個人の思いは封殺され、全体のために個人が犠牲にされることがありました。

それが今では一般の人から企業のCEOまでが、SNSで思いを語っていますよね。しかもその声から新たな商品も生まれている。

例えば、女性の体の悩みを解決する「フェムテック」が注目されていますが、以前なら流通に乗せるために大量生産しないとならなかったところ、個人向けECサイトなどを使えば、小ロットで消費者に届けられるようになりました。

その良い例が生理用ナプキンの要らない吸水ショーツで、個人が販売していたことで話題になり、今では大手アパレルも参入している。「生理を快適に過ごしたい」という女性の声がネット上で可視化され、企業と消費者がキャッチボールしながらビジネスチャンスを生み出した。

「個人的なことは政治的なこと」という有名な言葉がありますが、まさに「個人的なことは経済的なこと」です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円急落、日銀が追加利上げ明確に示さず

ビジネス

米国株式市場=続伸、ハイテク株高が消費関連の下落を

ワールド

ベネズエラ情勢巡る「ロシアとの緊張高まり懸念せず」

ビジネス

米11月中古住宅販売、0.5%増の413万戸 高金
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中