銀座高級クラブのママが証言「仕事のデキない人ほどよく買っている『あるもの』」
哀川翔が決めた「家族の恐怖のルール」
いつだったか、お店の女の子に、俳優の哀川翔さんがテレビで話していた「家族の恐怖のルール」がおもしろかったという話を聞きました。
そのルールとは、「トイレットペーパーを最後まで使って補充しなかったら半殺し」「落ちているゴミを跨(また)いだら半殺し」というもの。哀川さんらしいとはいえ"半殺し"とは穏やかではありませんが、ルールそのものについては「なるほど」と思わされたものです。
その話を聞いて、「立つ鳥跡を濁さず」ということわざが心に浮かびました。その場の水を濁らせず、澄んだままにして飛び立つ水鳥のように、人も「その場を立ち去るときは、見苦しくないようにきれいに始末をしなさい」という教えです。
この言葉は、転職や退職の際には身ぎれいに円満に辞めるべきという「引き際の美しさ」の例えに使われることが多いのですが、意味するところはそれだけではない、と私は思っています。
「立つ鳥跡を濁さず」とは、今いる場所(とくに公共の場)から立ち去るときは、「後から来る人」や「次に使う人」のことを考え、その人の気持ちを慮おもんぱかって行動しなさい、という教えでもあると思うのです。
でも残念ながら世の中にはそのことに考えが及ばず、「跡を濁しっ放し」で平気な人が少なくありません。オフィスでも、コピー機で拡大コピーを取ったら、標準設定に戻さずそのままにしっ放し。
コピー用紙がなくなっても補充せず、そのままにしっ放し。シュレッダーのゴミがいっぱいになっても、そのままにしっ放し。会議室を使ってイスやデスクを動かしても、元に戻さずそのままにしっ放し。
何でもかんでも「そのままにしっ放し」で、その後に使う人のことを考えない。こういう配慮や気遣いの意識に欠けている人は、十中八九、いい仕事ができません。
さっきまでいた場所には、自分の人間性が残されている
当然のことながら、仕事は人と人との関係の上に成り立っています。いわばチームプレーです。ですから、「自分だけがよければいい。あとは知ったことじゃない」という自己中な考え方をしている人の仕事が首尾よく進むはずがありません。
自分だけでなく、周囲の人の仕事もスムーズに進むように、いっしょに働く仲間もストレスなく仕事ができるように。そのために「自分は何をすべきか」を考えて行動することが必要です。
そうした行動を心がけることは、回りまわって自分の仕事をスムーズに、首尾よく進めることにもなるでしょう。次にそこに来た人たちが、次にそこを使う人たちが、先に立ち去った人に対してどんな印象を持つか。
「あ、きちんと片づけてある。助かった」
「やっぱりあの人、ちゃんとしてるね」
「自分が使ったんだから、補充くらいしろっての」
「あの人、またやりっ放しだよ」
社会人としての評価とは、こうしたところに表れるのではないでしょうか。
次に使う家族のために、トイレットペーパーがなくなったら補充すること――哀川家のルールは、社会生活の基本ルールなのです。社会人たるもの、去り際は美しく。あなたがさっきまでいた場所には、あなたの人間性が残されている。そう心得たいものですね。
伊藤由美
銀座「クラブ由美」オーナー
東京生まれの名古屋育ち。18歳で単身上京。1983年4月、23歳でオーナーママとして「クラブ由美」を開店。以来、"銀座の超一流クラブ"として政治家や財界人など名だたるVIPたちからの絶大な支持を得て現在に至る。本業の傍ら、「公益社団法人動物環境・福祉協会Eva」の理事として動物愛護活動を続ける。
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