最新記事

ネット

仕事ができる人は実践している 「お世話になっております」より効果的なメールの書き出し

2022年1月30日(日)08時00分
安田峰俊(ルポライター、立命館大学人文科学研究所客員協力研究員) *PRESIDENT Onlineからの転載

糸井氏の仕事相手は大企業の人たちが多いはずだ。すでに2003年の時点で、こうしてジョークのネタにできる程度には、初対面の相手にも「お世話になっております」を使うビジネスメールが氾濫していたのだろう。

「黒のリクスー女子」の発生と時期が被るワケ

すこし話は変わるが、大学ジャーナリストの石渡嶺司氏が日本経済新聞のウェブ版に寄稿した「リクルートスーツはいつ黒になった?(下)」という記事がある。

こちらによると、就職活動にのぞむ女子学生の間で黒のリクルートスーツを着用する風潮がひろがりはじめたのは1998〜2000年ごろから、さらに2002〜2004年にこの服装が一気に多数派になったという(私自身がこの時期に就職活動をおこなった世代なので、実感としてもよくわかる)。

日本の就活女子の外見が、北朝鮮の女性兵士さながらに同じ服装と髪型できっちり統一されていった時期と、ビジネスの場で「お世話になっております」式のメール定型句が一気に市民権を得た時期が、ほぼ同時期なのは興味深い。

当時はネットが普及した直後だ。ことによると、この時点でのYahoo! Japanの検索結果の上位に表示されていた情報を大学生や若手社会人がみんな読んだことで、ビジネスメールの定型句や就活ファッションが非常に短期間のうちに標準化され、全国的にひろまった――。

などといった、文化の伝播を考えるうえで興味深い現象が起きていた可能性もある。

「お世話になっております」が有効なケース

さて、私が「お世話になっております」の起源を延々と論じたのは、この表現が日本の由緒ただしき礼儀作法でもなんでもないことを、読者に伝えたかったからだ。メールを送る相手と人間的な信頼関係を築きたい目的がある場合などは、マニュアル通りの表現があまり好ましくない場合も多い。

もっとも、ときには無個性な定型句こそが必要、というケースもないではない。

まずは「お世話になっております」「よろしくお願い申し上げます」のセットを使うべき局面について考えていこう。

①個性を強調しないアプローチが求められる場合
たとえば、就活生や若手社員などが、純粋に事務的な内容のメールを送るケースだ。

メールを受けとる人事担当者や上司の気持ちを想像してほしい。まずは指示通りに動くことが期待される若手からの事務連絡で、妙に尖った個性を主張されたり、馴れ馴れしく振る舞われたりしても迷惑なだけである。

ほか、取引先の担当者とほとんど面識がなく、ルーチン化したやりとりが延々と続いている場合も定型表現を使っていい。ある日いきなり「昨日はペットの犬(ララちゃん5歳)の誕生日でした」と、やたらに人間的な話を書かれても反応に困るだけだろう。

こうした、記号的な定型文こそ必要とされる局面では、メールを書く側がとるべき振る舞いもみえてくる。どうせ無個性な文章を書くなら、より無難で礼儀正しいイメージをあたえたほうがTPOにかなうはずだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

GSのプライベートクレジット・ファンド、解約請求5

ワールド

米政権、TSA職員9400人超削減を提案 予算15

ワールド

ゼレンスキー氏、エネインフラ巡る停戦案を堅持 ロシ

ビジネス

米国株式市場=上昇、トランプ氏発言と米・イラン協議
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 4
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 5
    トランプ、イランに合意期限「米東部時間6日午前10時…
  • 6
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 7
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 8
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 9
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 10
    スパイス企業の新戦略...エスビー食品が挑む「食のア…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 3
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 9
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 10
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中