最新記事

クリエイティビティー

創造性は誰もが持つ力...発揮するために必要な「変異×適応」のプロセスとは

2021年12月29日(水)17時30分
flier編集部
太刀川英輔

Eisuke Tachikawa

<創造性を発揮する方法を「生物の進化」になぞらえて論じた話題の書『進化思考』の著者・太刀川英輔氏に聞く、進化思想の体系化と想像性教育の未来>

※このインタビュー記事は、本の要約サービス「flier(フライヤー)」からの転載です。

創造性は生物の進化と同じプロセスを経て発揮される――。2021年4月に刊行された『進化思考』(海士の風)の著者、太刀川英輔さんは、創造のメカニズムを「変異×適応」という進化になぞらえて解き明かしました。本書は「山本七平賞」を受賞するなど、話題を呼んでいます。

「創造的な人になりたかった」。そう話す太刀川さんの原点、原体験は少年時代にまでさかのぼります。太刀川さんが目指す最終ゴールや次回作の構想について、インタビューで語っていただきました。

足掛け3年、スライドは500枚

── 500ページを超す大変な労作ですね。最初からこれほどのボリュームになると想定されていたのでしょうか。

2018年ごろから執筆が本格化しましたが、すでに進化思考に関するスライドが500枚ほどありました。それらを整理し、まとめ上げるとなると、300~500ページにはなると見込んでいました。結果的に相当厚くなってしまいましたね。

執筆当初、自分の中でも明解でなかった考えや未確立だった論理をクリアにしていく作業は、苦労の連続でした。章を増やしたり、順序を入れ替えたり、さまざま試行錯誤する中で、自身の思考も深まっていきました。

211229fl_tck02.jpg

NOSIGNER提供

── 「進化思考」という考え方に至った 背景は何だったのでしょうか。

大学で建築について学び、以降デザインの道を歩んでいくことになるのですが、私が大学生だった2000年代はデザインの分野にデジタルツールが本格的に取り入れられた最初期の世代でした。誰でもデジタルツールの力で、ある程度整ったデザイン、見栄えがするデザインを作れるようになったのです。

その結果、アイデアの本質的な良しあしではなく、表現のカッコよさ、驚き、クオリティのほうがデザインを引っ張ってしまうという構図に変わってしまいました。表現の特異性が取りざたされ、本質的なアイデアの部分は問われない、見えにくくなったことは、今に至るまでデザイン業界が抱えている構造的な問題です。

そうした中、「良いアイデアは何か」「なぜこの構造になっているのか」といった問いと向き合い続けると、「言葉として伝えやすい奇抜なものは良いアイデアと認識されやすい」という不思議な現象にたどり着きました。つまりアイデアには強い言語性が備わっている。でも、この性質はなぜか進化にも同じように見られたんですね。その考え方がベースとなって「変異」の思考が生まれ、「進化思考」の半分を構成する核となっています。

211229fl_tck04.jpg

『進化思考』
 著者:太刀川英輔
 出版社:海士の風
 flierで要約を読む

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ハセット氏のFRB議長候補指名、トランプ氏周辺から

ビジネス

FRBミラン理事「物価は再び安定」、現行インフレは

ワールド

ゼレンスキー氏と米特使の会談、2日目終了 和平交渉

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 6
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 7
    世界の武器ビジネスが過去最高に、日本は増・中国減─…
  • 8
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 9
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中