最新記事

経営

「有給休暇」のよくある誤解と正解

2021年12月23日(木)20時00分
庄司ライカ ※経営ノウハウの泉より転載

よくある誤解と正しい理解

■1:うちの会社には年次有給休暇がない?

「うちの会社には年次有給休暇がない」という経営者がいます。雇用契約書に「年次有給休暇なし」と記載してあるからだというのです。

たとえ雇用契約書にそのような記載があったとしても年次有給休暇は発生します。労働基準法は強行法規となるため、使用者と労働者の当事者間の合意などの特約によって排除できません*。

*労働基準法第13条により、強行法規である労働基準法に違反する条項は無効になります。罰則は設けられていませんが、その条項に関連して訴訟にいたった場合は不利になる可能性があります。判明した場合は、条項の修正あるいは削除を検討しましょう。

■2:パートタイム労働者には年次有給休暇がない?

パートタイム労働者には年次有給休暇がないと思っている方は経営者側も労働者側でも珍しくありません。パートタイム労働者や派遣労働者など、正社員の以外の雇用形態でも、条件を満たせば年次有給休暇は付与されます。雇用形態によって、年次有給休暇が付与されないということはありません。

■3:取得義務は年度単位で取得させればよい?

「年5日の年次有給休暇の取得義務は年度単位、つまり4月1日から翌年の3月31日までに年5日取得させればよい」というのは誤解です。正しくは労働者ごとに異なる付与日から1年間に5日取得させる必要があります。

管理が大変な場合には年次有給休暇の付与日を会社で統一するなど方法がありますが、従業員同士の不公平など不満が発生しやすいため、統一する場合は社労士などの専門家に相談することをおすすめします。

■忘れやすい3つのポイント

取得義務が発生するということに気を取られがちですが、忘れやすい3つのポイントをお伝えします。

(1)労働者に対する意見聴取
使用者から年次有給休暇の取得時季を指定する場合、使用者は労働者に対して年次有給休暇の取得時季に対する意見を聴取する義務があります。できる限り労働者の希望を尊重するように努める必要があります。

(2)年次有給休暇管理簿の作成
2019年4月の労働基準法改正によって、使用者は年次有給休暇管理簿を作成する義務ができました。書式は自由ですが、労働者ごとに「年次有給休暇を取得した日(=時季)、日数、年次有給休暇が付与する日(=基準日)」を記載した管理簿を作成し、3年間保存する必要があります。

(3)就業規則の変更
年次有給休暇は文字どおり「休暇」の一種となります。就業規則を作成した場合、必ず記載しなければならない事項があり、これを絶対的必要記載事項といいます。

------就業規則の絶対的必要記載事項------
1 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
2 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の 締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
3 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

絶対的必要記載事項には休暇が含まれるため、就業規則の年次有給休暇の条文には時季指定の方法について記載する必要があります。厚生労働省のモデル就業規則などを参考にしましょう。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局

ワールド

ポーランドの2つの空港が一時閉鎖、ロシアのウクライ

ワールド

タイとカンボジアが停戦に合意=カンボジア国防省
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中