最新記事

リモートワーク

在宅ワークは「気楽」な一方で「ストレスの宝庫」、学ぶべき「休む技術」とは

2021年12月17日(金)11時34分
flier編集部

信頼性と即効性のある本を書きたい

── 西多先生は、睡眠医学、身体運動とメンタルヘルス、アスリートのメンタルケアの研究を続けるとともに、ストレスケア、テンパらない技術など、身近な視点で私たちの心身のケアにつながる本を多数執筆されています。こうした執筆の原動力は何でしょうか。

読者の日常に役立つような本を書きたいという思いです。今ではネットを通じて、「夜にスマホを使うと睡眠の質が下がってしまう」といった情報に誰でも触れられます。ですが、ネットの情報は玉石混交ですし、科学的なエビデンスをベースにした、専門家ならではの情報にわかりやすくふれられる機会が大事だと考えています。

とはいえ研究結果をまとめただけではどう実践に結びつけるかが見えづらい。そのため、読者が「読んだ後どうするのか?」がわかるように、信頼性と即効性のある本を書いていきたいですね。

医療の世界とは何かを教えてくれた社会派小説の金字塔

── これまで読まれてきた本の中で、西多先生ご自身のキャリアに影響を与えた本は何でしたか。どんな影響があったのかについてもお聞きできれば嬉しいです。

人生に影響を与えた本というと、若いときに読んだ『白い巨塔』が思い浮かびます。社会派小説の金字塔を打ち立てた山崎豊子氏による、医局制度の問題点や医学界の腐敗を鋭く追及した傑作です。人間の描写も素晴らしく、「医療の世界とはこういうものだ」というのが生々しく描かれています。

この小説を読んだことが、後に実体験を小説のように書いた自著『自分の「異常性」に気づかない人たち』につながっています。この本では精神科医として私が診察室で出会った人たちを取り上げていますが、1960年代に書かれた『白い巨塔』では精神科医は描かれていません。精神医学の世界が一般の人に身近になってきたのはここ最近になってからなのだと改めて思いました。

── 西多先生の今後のビジョンについて教えてください。

睡眠とメンタルヘルス、スポーツなど、幅広く研究を続けると同時に、芸術やなど創造性と不眠の関係も探っていきたいと考えています。偉大な芸術家や政治家、アスリートは往々にして不眠を経験していることが多いものです。不眠は解消すべき問題ととらえられていますが、たとえば創造性の発揮にも影響を与えているのかもしれない。不眠のポジティブな影響についても探究し、何かしら皆さんの役に立つ知見を提供していきたいですね。

211216fl_nsd02.jpg

Masaki Nishida


西多昌規(にしだ まさき)

精神科医・医学博士。早稲田大学スポーツ科学学術院・准教授、早稲田大学睡眠研究所・所長。

1970年石川県生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。国立精神・神経医療研究センター病院精神科、東京医科歯科大学助教、ハーバード大学医学部客員研究員、自治医科大学講師、スタンフォード大学医学部客員講師を経て、現職。

日本精神神経学会精神科専門医、日本睡眠学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクターなど。専門は睡眠医学、身体運動とメンタルヘルス、アスリートのメンタルケアなど。主な著書に『「昨日の疲れ」が抜けなくなったら読む本』『休む技術』『「集中力」を高める技術』(だいわ文庫)、『「テンパらない」技術』(PHP文庫)、『自分の「異常性」に気づかない人たち』(草思社文庫)など多数がある。

flier編集部

本の要約サービス「flier(フライヤー)」は、「書店に並ぶ本の数が多すぎて、何を読めば良いか分からない」「立ち読みをしたり、書評を読んだりしただけでは、どんな内容の本なのか十分につかめない」というビジネスパーソンの悩みに答え、ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。

通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されているほか、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。

flier_logo_nwj01.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中