プレゼンで強調したい部分に赤を使うな 相手の目を引く「意外な色」とは?
実験を進めていくと、赤文字では意外と人を誘導できないこと、彩度が高い色は見にくいためなのか敬遠されがちなことなどがわかりました。黄色やオレンジも、アクセントカラーとして使われがちですが、スライドの中で黄色やオレンジが占める割合が多いと、目がチカチカして集中できません。プラス効果のあるアクセントにはならないのです。
最もインパクトを残せる色は...
実験の結果、最も視覚を誘導しやすいと判明したのは、意外にも「白」でした。とくに効果があるのは、余白の「白」と白抜き文字の「白」です。
伝わってほしいことの周りに余白を増やし、黒い背景などに白抜きの文字を使うことで効果的にインパクトを残せるようになるのです。まず伝わってほしい結論が目に入るようにして、そこから詳細説明に視線を移すようにします。
このルールを頭に入れておけば、デザインをどうするかと悩む時間は減り、「何が最も重要なのか」を考えるための時間に割り振ることができます。
「白抜きの文字」は、聞き手の記憶に長く残っている確率も高くなりました。そこで、資料の中で重要な文字だけを切り出して別スライドにして、黒背景で白抜き文字を強調したところ、聞き手の印象に強く残すことに成功しました。白抜き文字でまず結論を伝えて、「詳細は次のスライドに記載してあります」と発言することで、伝わってほしいことをうまく伝えられたのです。
アイコンや画像は「対角線上」を意識する
資料を見るときなどには左斜め上から右斜め下の対角線に沿って目線が動きます。この対角線上にアイコンや画像を配置すると、約8割の閲覧者がそのアイコンや画像と、その横に配置された文字を読むことが調査でわかっています。
ルールなく配置された場合と、対角線上に配置した場合を比べると、65%の人は後者がわかりやすいと答えています。それも、即答していました。
この原則は、スライドを10秒見たときに何が頭に残りやすいかを答えてもらった際に、色や文字の大きさといった要素のほかに、左斜め上に配置された文字や図形に目が止まりやすい傾向に気づいたことから発見できたものです。その次にどこが印象に残るかを聞くと、やや中央に移動して目線が右斜め下に移っていたのです。
「目線を右に移動する」習性を生かそう
似たテーマについて解説している書籍の中には、資料を見るときは視線がZ型に動くものだと書いているものもあります。Z型とは、名称が示すとおり、左上から水平移動して右上へ行き、その後、右上から左下へ目線が落ち、最後は左下から右下へ横スライドする目の動きです。
私たちの実験においても、まず目に留まったものが印象に残り、そこに書かれた文章に興味を持てば、目線を右に移動してさらに文章を読むという傾向があることが判明しています。Z型とイコールではありませんが、それに近い目の動きです。
対角線の法則は、私が講師を務めるパワポ講座の受講生2万3000人のうち78%が実践していて、81%が「視線を動かすことに効果があった」と答えました。「配置するアイコンの数は1スライドに4つ以内。オンライン会議であれば1つ」というルールも適用したところ、62%が実践し、82%が効果を実感していました。
気遣いでいっぱいの"忖度資料"はほぼ使われない
1万9000人分の資料の作成状況を調べたところ、約23%のページが上司や顧客に対する過剰な気遣いで作成されていることがわかりました。補足資料や緻密なデータ、詳細な説明文などがそれにあたり、必要だろうという憶測で作成されていたのです。
上司側の協力を得て匿名回答でヒアリングしたところ、こうした忖度(そんたく)資料のうち80%以上のものは実際には使われていませんでした。中にはページがめくられてさえいないものもありました。必要のない資料の作成に部下が時間を割いていたことを知り、不快に思う上司もいたほどです。