最新記事

ビジネス

プレゼンで強調したい部分に赤を使うな 相手の目を引く「意外な色」とは?

2021年12月13日(月)16時15分
越川慎司(株式会社クロスリバー代表、株式会社キャスター執行役員) *PRESIDENT Onlineからの転載

実験を進めていくと、赤文字では意外と人を誘導できないこと、彩度が高い色は見にくいためなのか敬遠されがちなことなどがわかりました。黄色やオレンジも、アクセントカラーとして使われがちですが、スライドの中で黄色やオレンジが占める割合が多いと、目がチカチカして集中できません。プラス効果のあるアクセントにはならないのです。

最もインパクトを残せる色は...

実験の結果、最も視覚を誘導しやすいと判明したのは、意外にも「白」でした。とくに効果があるのは、余白の「白」と白抜き文字の「白」です。

伝わってほしいことの周りに余白を増やし、黒い背景などに白抜きの文字を使うことで効果的にインパクトを残せるようになるのです。まず伝わってほしい結論が目に入るようにして、そこから詳細説明に視線を移すようにします。

このルールを頭に入れておけば、デザインをどうするかと悩む時間は減り、「何が最も重要なのか」を考えるための時間に割り振ることができます。

「白抜きの文字」は、聞き手の記憶に長く残っている確率も高くなりました。そこで、資料の中で重要な文字だけを切り出して別スライドにして、黒背景で白抜き文字を強調したところ、聞き手の印象に強く残すことに成功しました。白抜き文字でまず結論を伝えて、「詳細は次のスライドに記載してあります」と発言することで、伝わってほしいことをうまく伝えられたのです。

アイコンや画像は「対角線上」を意識する

資料を見るときなどには左斜め上から右斜め下の対角線に沿って目線が動きます。この対角線上にアイコンや画像を配置すると、約8割の閲覧者がそのアイコンや画像と、その横に配置された文字を読むことが調査でわかっています。

ルールなく配置された場合と、対角線上に配置した場合を比べると、65%の人は後者がわかりやすいと答えています。それも、即答していました。

この原則は、スライドを10秒見たときに何が頭に残りやすいかを答えてもらった際に、色や文字の大きさといった要素のほかに、左斜め上に配置された文字や図形に目が止まりやすい傾向に気づいたことから発見できたものです。その次にどこが印象に残るかを聞くと、やや中央に移動して目線が右斜め下に移っていたのです。

「目線を右に移動する」習性を生かそう

似たテーマについて解説している書籍の中には、資料を見るときは視線がZ型に動くものだと書いているものもあります。Z型とは、名称が示すとおり、左上から水平移動して右上へ行き、その後、右上から左下へ目線が落ち、最後は左下から右下へ横スライドする目の動きです。

私たちの実験においても、まず目に留まったものが印象に残り、そこに書かれた文章に興味を持てば、目線を右に移動してさらに文章を読むという傾向があることが判明しています。Z型とイコールではありませんが、それに近い目の動きです。

対角線の法則は、私が講師を務めるパワポ講座の受講生2万3000人のうち78%が実践していて、81%が「視線を動かすことに効果があった」と答えました。「配置するアイコンの数は1スライドに4つ以内。オンライン会議であれば1つ」というルールも適用したところ、62%が実践し、82%が効果を実感していました。

気遣いでいっぱいの"忖度資料"はほぼ使われない

1万9000人分の資料の作成状況を調べたところ、約23%のページが上司や顧客に対する過剰な気遣いで作成されていることがわかりました。補足資料や緻密なデータ、詳細な説明文などがそれにあたり、必要だろうという憶測で作成されていたのです。

上司側の協力を得て匿名回答でヒアリングしたところ、こうした忖度(そんたく)資料のうち80%以上のものは実際には使われていませんでした。中にはページがめくられてさえいないものもありました。必要のない資料の作成に部下が時間を割いていたことを知り、不快に思う上司もいたほどです。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中