最新記事

数学

人間には簡単だが機械には苦手なこと、その力を育むものこそ「数学」だ

2021年11月18日(木)11時54分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
AIと囲碁

jxfzsy-iStock

<どれだけ科学が進歩しても機械が苦手とし、いまだ人間にかなわずにいる能力こそ、数学によって育まれる「抽象性」の力だった>

数学とは、見えないものを見ようとする試みである。大切であるけれども理解できないことをなんとかして理解しようとする試みである――これは、『見えないときに、見る力。 視点が変わる打開の思考法』(CCCメディアハウス)の、著者・谷川祐基氏の言葉だ。

前著『賢さをつくる 頭はよくなる。よくなりたければ。』(CCCメディアハウス)が好評の谷川氏によると「数学を学ぶ目的は抽象性を育てること」である。新刊『見えないときに、見る力。』では、「数学は問題解決能力である」とか「数学は論理的思考力を養う」といった、よく言われる数学という教科の存在意義に対して、新たな見解を投げかけた。

ではなぜ、抽象性を育てることがそんなに大事なのか? それは、この現実社会を生きていくうえで、ときに抽象性は論理を超えて人を動かし得るからだ。抽象性とは人を理解しようとするやさしさ、つまり、人が人たる能力につながるからだ。

人の仕事を奪うという文脈で取り上げられることが多いAIについても、抽象化力において人間を超えるレベルには達していない。『見えないときに、見る力』の内容を2回にわたって抜粋紹介する連載の後半では、AIと人の関係について紹介する。

連載第1回:算数嫌いな人たちに共通する「苦手な単元」にこそ、数学の神髄があった

◇ ◇ ◇

「AIなんかに負けへんで! と思ったら、抽象化力や」

――具体化のコンピュータと抽象化のAI


ピタゴラス(以下「ピ」): 最近、AIちゅうのが話題になっとるやろ?

環太(以下「環」): 技術の進歩は基本的に望ましいと思うんですけど、「AIに仕事が奪われる!」とか、「子どもの学力がAIに負ける!」とかネガティブにも語られますね。

ピ: ところで、AIの定義って、いったい何や? ただのコンピュータ・プログラムとAIの違いってなんやねん?

環: AIとはArtificial Intelligenceの略。日本語に訳せば「人工知能」ですけど、指し示すものの幅が広すぎて、しっかりした定義は難しいですよね......。将棋のプログラムもAIだし、ドラえもんや鉄腕アトムみたいな、会話ができるロボットをイメージする人もいます。ドラえもんみたいなAIは、まだできていないですね。

ピ: それを、わしがズドンと定義してやろうちゅうわけや。AIとは何なのか、スッキリわかるで。かっこいいやろ?

環: でも、AIって数学とあんまり関係なくないですか?

ピ: それが関係あるんやな~。

̶ ピタゴラスは、またいつものニヤニヤ顔をしている。

『見えないときに、見る力。
 視点が変わる打開の思考法』

 谷川 祐基 (著)
 CCCメディアハウス
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪首相、12日から訪中 中国はFTA見直しに言及

ビジネス

ドイツ輸出、5月は予想以上の減少 米国向けが2カ月

ビジネス

旧村上ファンド系、フジ・メディアHD株を買い増し 

ワールド

赤沢再生相、米商務長官と電話協議 「自動車合意なけ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 5
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    米テキサス州洪水「大規模災害宣言」...被害の陰に「…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 10
    中国は台湾侵攻でロシアと連携する。習の一声でプー…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中