最新記事

ビットコイン

ビットコインはコロナを経て、インフレヘッジ資産として劇的に成長した

2021年7月14日(水)20時24分
千野剛司(クラーケン・ジャパン代表)

株と債券

インフレと株価の関係は一概には話せませんが、一般的には「バリュー株」と言われるファンダメンタルズに比べて株価が安いと見られる株の方が、「グロース株」と言われるマーケット全体のパフォーマンスを上回ると見込まれる株よりインフレ時に保有した方が良いと言われています。

なぜならグロース株の評価は、一般的には将来見込まれる利益の現在価値に基づいて行われるからです。もしインフレ上昇率が予想を越えれば、将来的なキャッシュフローの現在価値は下がります。

また、高い配当を維持できる株もインフレ耐性があるといえるでしょう。さらに、インフレにより雇用が生まれたり現金から株への投資の増加が見込まれたりすることも、一般的には株にとっての追い風要因となります。

以下は、インフレ率が歴史的に高かった20の年(1902, 1909, 1941-42, 1947, 1950-51, 1968-70, 1973, 1975-78, 1981, 1987-90年)において、株と債券がどのように推移したかを示したグラフです。

210713kra_04.jpg

(出典:Kraken Intelligence「インフレ率が歴史的に高かった20の年における株と債券のリターン」)

20の年のうち債券がプラスのリターンを得た年は6回のみですが、株は11回でした。しかし、インフレ率の平均が6.4%で株価の平均リターンが2.5%であることは注目に値します。インフレ率が高い時期に株は債券や法定通貨よりパフォーマンスは良いものの、インフレから資産を完全に守ることはできていないことを意味します。

不動産

不動産や不動産投資信託(REIT)は、人気のあるインフレヘッジ投資先です。不動産の価格は、家賃の増加とともに上昇する傾向があります。

また、インフレによって建築資材などコストが上昇したり、建設会社が金利上昇による借入コストの増加を高い不動産価格で相殺するように求めたりすることもあります。これらは、不動産の所有者にとっては朗報でしょう。

しかし、必ずしもインフレとともに不動産価格が上がるわけではありません。もし政府によるインフレ対策として金利が上昇し、その結果としてキャップレート(還元利回り)が上がったら、不動産の価値は実質的に上がらないことになります。

なぜなら、不動産価格の算出方法は「年間の予想収益/キャップレート」であり、家賃の上昇率は一般的にインフレ率より低いことから、インフレによる家賃収入増などによる年間の予想収益の増加幅がキャップレートの上昇幅を相殺できない可能性があるからです。


キャップレート=(家賃収入-管理費や修繕費など)/不動産価格

マサチューセッツ工科大学の研究によりますと、歴史的にインフレ率を上回る上昇幅で収益が上がった不動産は商業施設だけであり、工業所有地やアパートはインフレによる価格上昇を部分的に相殺したのみであり、オフィスに至ってはインフレによって価値が著しく減少しました。

210713kra_05.jpg

(出典:Kraken Intelligence「インフレと不動産の種類別の収入・価値の変化」)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 初の実

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁

ビジネス

大手IT企業のデジタル決済サービス監督へ、米当局が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中