最新記事

ビットコイン

ビットコインはコロナを経て、インフレヘッジ資産として劇的に成長した

2021年7月14日(水)20時24分
千野剛司(クラーケン・ジャパン代表)
ビットコインとゴールド(イメージ画像)

MEDITERRANEAN-iStock

<世界がインフレに怯える中、ビットコインをはじめ仮想通貨の価値が見直されている【インフレと仮想通貨論(後編)】>

【記事前半】ビットコインで「資産を守れる」は本当? インフレの「経済論戦」から考える

今日、世界的にインフレ懸念が高まっています。背景にあるのは、新型コロナウイルスによる経済失速への対応策として世界中で実施された大規模な景気刺激策があります。未曾有のマネー膨張と言われる中央銀行による金融政策の末路としてインフレが加速し、米ドルや日本円の価値が減少すると考える投資家は少なくないでしょう。

記事の前編でも述べた通り、インフレは立場によって敵にも味方にもなります。一部の人々にとっては経済的な追い風になる一方、他の人々にとっては無慈悲な富の破壊者に変わります。

インフレの暴走は多くの一般市民を貧困層に追いやる一方で、政府の借金を帳消しにします。政府がインフレをコントロールできずむしろインフレを歓迎するという動機がある中、あなたは自身の資産を守るためにどうするべきか考えるべきでしょう。

資産を守るためにあなたができること

では、インフレが発生したら理論的に上昇すると考えられる「インフレヘッジ」資産は何でしょうか?伝統的には金や株、不動産があげられていましたが、最近ではビットコインが仲間入りを果たしました。

金(ゴールド)

金は、歴史的に景気後退時に安定した価格推移を見せてきました。金は希少性が高く、供給量を増やすことが困難で、持続性が高い一方で分割可能つまり同量での交換が可能な点が特色です。このため金は魅力的な価値保存手段、もしくは「安全資産」として認知されています。

210713kra_03.jpg

(出典:Kraken Intelligence「金の価格推移」)

例えば、アメリカのニクソン大統領とカーター大統領時代のインフレが高まった時、金は全ての資産のパフォーマンスを上回りました。

第37代ニクソン大統領(1969年〜1974年)は、米ドルと金の交換を停止する一方、賃金と価格をコントロールすることでインフレの解消を試みました。これにより、米経済はほとんど破壊しかけたと批判的にみる専門家も少なくありません。ニクソン大統領の就任期間中、米国のインフレ率は二桁上昇を見せて、金の価格は350%も上昇しました。

また、第39代ジミー・カーター大統領(1977年〜1981年)は、連邦準備理事会(FRB)の議長にポール・ボルカー氏を指名し、インフレ率が最大18%まで上がりました。ボルカー氏は、前例のないレベルまで利上げをして二桁のインフレ率に対応しようとしました。

この時期の高い金利は「ボルカー・ショック」として知られており、1981年の景気後退の主な要因とみられています。カーター大統領の就任期間中、金の価格は148%も上がりました。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBは利下げ余地ある、中立金利から0.5─1.0

ビジネス

米ワーナー、パラマウントの買収案を拒否 ネトフリ合

ビジネス

企業は来年の物価上昇予測、関税なお最大の懸念=米地

ビジネス

独IFO業況指数、12月は予想外に低下 来年前半も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 10
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中