G20、法人課税強化で合意 共同声明で変異株に懸念示す
主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は10日、新型コロナウイルスの変異株と途上国のワクチン不足が経済回復の障害になりうるとの認識を盛り込んだ共同声明を採択した。写真は国際課税に関するG20のシンポジウム。7月9日、ベネチアで撮影(2021年 G20 Italy/Handout via REUTERS)
主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は10日、新型コロナウイルスの変異株と途上国のワクチン不足が経済回復の障害になりうるとの認識を盛り込んだ共同声明を採択した。
また、世界的に企業への課税を強化するため、法人税率を最低15%以上にすることで合意した。経済協力開発機構(OECD)による7月1日の大筋合意を追認した。10月にローマで開くG20首脳会議で最終合意を目指す。
共同声明は、ワクチンと経済対策によって前回4月の会合に比べて経済見通しは改善しているものの、インドで最初に確認されたデルタ株など変異株が障害になりうると指摘した。「回復度合いは国によって、さらは各国国内でも大きく異なり、とりわけ変異株の広がりとワクチンの接種ペースの差によるダウンサイドリスクに引き続きさらされている」とした。
その上で、あらゆる政策手段を取ることを確認するとともに、物価と財政の安定を守ることにも言及した。
一方、議長国イタリアのフランコ財務相は、新型コロナ対策で市民に新たな制限を課すことを回避する方針でも合意したと表明。「人の移動や生活様式に対する制限の再導入を回避すべきという考えで一致した」と述べた。
共同声明では新型コロナワクチンについて「世界的に公平な分配」を支持する立場を強調したものの、具体的な提案は盛り込まれず、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)が提言するワクチン向けの500億ドルの資金調達に留意するにとどまった。
イタリアは、10月のG20首脳会議までに途上国向けのワクチン資金の問題についてG20で改めて議論するとし、新たな変異株に目を向ける必要があると述べた。詳細には踏み込まなかった。
IMFのゲオルギエワ専務理事は、ワクチン接種状況の差などによって世界経済は回復の格差が拡大する可能性があると警鐘を鳴らした。
法人課税強化で合意
今回の会議で政策面の最大のイニシアチブとなったのは、国際的な法人課税を巡る合意だ。
15%以上という最低法人税率の設定は、多国籍企業が税率の低い国を選んで納税するのを阻止する狙いがある。また、課税の一部を企業が拠点を置く場所ではなく、製品・サービスを販売した場所に基づいて行う計画で、アマゾン・ドット・コムやアルファベット傘下のグーグルなどIT(情報技術)大手への課税が変化することになる。