最新記事

仮想通貨

ベネズエラ、ハイパーインフレ回避で暗号資産に走る市民

2021年6月28日(月)12時14分
コロンビアで料理宅配ドライバーとして働くベネズエラ人のパブロ・トロさん

コロンビアで料理宅配ドライバーとして働くベネズエラ人のパブロ・トロさんは、暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーン技術に特段興味があるわけではない。写真は15日、コロンビアのボゴタで配達仲間いあいさつするトロさん(2021年 ロイター/Luisa Gonzalez)

コロンビアで料理宅配ドライバーとして働くベネズエラ人のパブロ・トロさんは、暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーン技術に特段興味があるわけではない。しかし、家族に送金するたびに間接的にデジタルトークンを利用している。

2019年にコロンビアに移住したトロさんが送金時に使っているのは「Valiu(バリュー)」と呼ばれるアプリ。トロさんは、コロンビアペソで受け取った賃金をベネズエラの銀行の口座に現地通貨ボリバル建てで預金するのだが、ハイパーインフレに見舞われ、米国から制裁を科されてベネズエラ経済がどん底状態にある中で、普通のやり方ではこの取引はすんなりといかない。

ただ、バリューを通じてペソで仮想通貨を購入すれば、世界的な個人間の仮想通貨取引プラットフォームのローカルビットコインで、現地通貨建てのトークンに交換できる。

現在もベネズエラ移民の間で主流となっているのは、非公式の外為取引所を通じた送金だ。ところが、トロさんから見ると、そうした取引所よりもバリューの方が信頼度は高い。

トロさんは「ベネズエラで停電になったり、インターネットサービスが停止したりすれば、誰かの家族に送金するのにかかる時間に多大な影響を及ぼす。(今は)ベネズエラで停電が起きているか、あるいは携帯サービスがダウンしているかを気にする必要がない」と話す。

彼がコロンビアに移住したのは、ベネズエラで就いていた大学の守衛の仕事でもらう月給では、1日分の食料さえ満足に買えなかったためだ。

仮想通貨採用で世界3位に

ハイパーインフレと米国の制裁に経済が打ちのめされたベネズエラにあって、伝統的な銀行システムが取り扱っていた様々なサービスを提供する新たな手段として出現したのが仮想通貨と言える。利用者や専門家の話では、送金以外にも、賃金をインフレから守ったり、通貨急落が続く中で企業がキャッシュフローを適切に管理したりするツールとして役立っている。

ブロックチェーン分析企業・チェーンアナリシスは昨年公表したリポートで、独自に算出した「世界仮想通貨採用指数」におけるベネズエラのウエートを第3位に設定した。ボリバル建て取引が高水準に上ることが主な理由だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 4
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中