最新記事

マイク・タイソンやJay-Zも...黒人起業家が大麻ビジネスに続々参入の深い訳

BLACK STARTUPS GO GREEN

2021年4月16日(金)19時10分
ジョン・ジャクソン

210420P49_MFN_03.jpg

サクセス・センターズのホワイト(写真左)もモンマルケットたちと同じ考えだ JENNIFER SKOG/SUCCESS CENTERS


どんなビジネスにも言えることだが、起業をするにはまとまった資金が必要だ。マイノリティーにはそれが大きな参入障壁となる。大麻ビジネスのノウハウはカリフォルニア州のオークスターダム大学などで学べるが、事業を始めるには大麻栽培用の広大な農地や調剤薬局を開く建物を確保しなければならず、借りるにせよ買うにせよかなりの元手がいる。

「大麻の事業というだけで、面積当たりのレンタル料が3倍になったりする」と、サクセス・センターズのホワイトは言う。儲かる商売とみて地主が地代をつり上げる場合もあるが、法的規制が流動的なため事業が突然禁止されて賃料の支払いが滞るリスクがあり、それを織り込んで賃料が高めに設定されることもある。

「懐の深い」産業を目指す

地代・家賃が通常より高くつく上、銀行の融資も受けにくいと、ホワイトは実情を説明する。各州当局に大麻栽培に課している高い税率を引き下げ、補助金の支給など起業支援に力を入れてほしいと訴えている。

大麻産業はその性質上、社会的公正を目指す運動とリンクしてきた。大麻合法化運動を長年率いてきたアンドルー・ディアンジェロは19年にNPO「最後の囚人プロジェクト」を立ち上げた。自分たちの「ミッションは、大麻で投獄された全ての囚人の釈放と前科取り消しを勝ち取り、就労・社会復帰を支援することだ」と、彼は本誌に話した。運動資金の大半は大麻事業から得ているという。利益を全額、社会的公正と大麻関連受刑者の前科取り消し運動に寄付すると公言しているマリフアナブランド「ジャスティス・ジョインツ」もパートナーに名を連ねている。

マーケティング専門家らが設立した「キャナインクルーシブ」は黒人に限らず、人種・民族的なマイノリティーや女性、性的マイノリティー、障害者ら多様な人材が大麻業界で活躍できるよう大麻企業のデータベースなどの情報を提供をしている。

このように、大麻業界で成功した多くの起業家は自分たちの経験や知識を新参組にシェアする使命を感じていると、ホワイトは言う。「大麻は肌の色を問わない。特定の人種や階層に限らず、難病の患者も含め多様な人たちが大麻を使用している」

顧客も多様なら、供給側も多様。多様な人々や価値観を包み込む懐の深い産業に育ってほしいと、彼女は願っている。

ニューズウィーク日本版 ジョン・レノン暗殺の真実
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月16日号(12月9日発売)は「ジョン・レノン暗殺の真実」特集。衝撃の事件から45年、暗殺犯が日本人ジャーナリストに語った「真相」 文・青木冨貴子

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

タイ首相、カンボジアとの戦闘継続を表明

ワールド

ベラルーシ、平和賞受賞者や邦人ら123人釈放 米が

ワールド

アングル:ブラジルのコーヒー農家、気候変動でロブス

ワールド

アングル:ファッション業界に巣食う中国犯罪組織が抗
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中