「4K」で高齢化のトラック業界を、輸送需要の急減と宅配需要の急増が襲っている
活況を呈しているように見えても、B2B貨物は需要減
しかし、それでもここ数年、トラック輸送のマーケットはドライバー不足などを背景として、売り手に有利な環境だったのだという。ところが、コロナ・ショックを機に状況は一変することとなった。
問題は、生活必需品以外の荷物の輸送需要が激減したことだ。工場~物流センター~店舗・オフィスを行き来する"企業間取引"のB2Bの領域では、"トラック余り"の現象が起き始めているのである。ネットショッピングの拡大を思えば意外に思えるかもしれないが、市場に出回る限られた求車情報に対し、車両を持て余している運送会社が採算度外視の運賃で入札してくるケースも相次ぐ。
運賃が投げ売りされている実態はドライバーたちも把握している。東京〜大阪間で大型車を運行する、あるドライバーは打ち明ける。
「配車係から、先日は東京~大阪間の大型トラックでの輸送を運賃六万円で引き受けた、と聞いた。売り上げがゼロになるよりはましだ、という判断のようだ。同区間の輸送がそんなに安い運賃になったことは今までなかったと記憶している。それだけ日本全体で輸送の仕事が減っているのだろう」(89ページより)
そうした運賃市況の悪化は、当然ながらトラック運送会社の収益減に直結する。ここ数年は上昇傾向にあったトラック運賃が、コロナの影響でパーになってしまった。感染拡大が収まれば、荷量は徐々に増えていくかもしれない。が、それでもコロナ前の水準にまで戻るとは考えにくくもある。
実態を知らない我々の目に、トラック業界は活況を呈しているように見える。だが、少なくともB2B貨物に関しては、現実はまったく違っているようだ。
一方、企業と個人間の取引であるB2C貨物の荷動きは急伸している。コロナ禍に伴う「巣ごもり消費」の格大で、ネット通販や生協などの食材宅配、ネットスーパーといったサービスでの宅配需要が増えているからだ。
物量は平時の1.5~2倍程度にまで膨れ上がっており、ドライバーや車両の確保が追いつかない。そのため納品(配達)までのリードタイムに遅れが生じているケースも見受けられるという。
つまり、大型トラックの需要激変とは異なり、軽トラ業界では、大手宅配便会社やネット通販会社、食品スーパーの店舗から委託される個人宅への配送など「B2C向け業務」へのシフトが加速しているということのようだ。
不在による再配達が多く非効率なB2C業務は、これまで軽トラ会社から敬遠されがちだった。ところが企業配の荷動きに回復の目処が立たないため、「いまは宅配の仕事に頼るしかない」という状況なのだ。