最新記事

環境

ガンジス川に沈んだ廃プラ回収事業 年間目標450トンに対し成果1トンで幕切れ

2021年1月25日(月)17時05分

AEPWによると、リニュー・オーシャンズに同団体が投じた資金は2年間で500万ドル。このうち一部がAEPWに返還済みで、同プロジェクトが活動を解消すればさらに追加で返還される見通しだという。

エクソンとシェルはロイターの質問をAEPWに転送した。ダウとシェブロン・フィリップスはコメント要請に応じなかった。

ほど遠い目標達成

AEPWは、5年間に「世界中で危機的状況にある100カ所余りの都市で数百万トンの廃プラを転用する」との目標を掲げている。これまでにリニュー・オーシャンズなど十数件のプログラムを発表したが、この目標達成にはほど遠い。

AEPWとその提携企業の公表資料によると、AEPWが資金提供しているプロジェクトのうち、これまでいくらかでも廃プラを回収したのはリニュー・オーシャンズなど3件だけで、いずれも小規模。AEPWによると、ガーナのプロジェクトの廃プラ回収は300トン。ウェブサイトによると、フィリピンのプロジェクトはこれまでのリサイクルが21トンだ。

世界中の廃プラ汚染についてまとまった統計は存在しない。ただ、入手可能な資料を元にすると、これらのプロジェクトによる回収・再利用は世界中の廃プラのほんの一部にすぎず、海洋から数百万トン規模の廃プラを回収するというAEPW自体の目標にもなお遠く及ばない。

例えば国連と各国のデータによると、毎年インドネシアとインドでは合計300万トン以上の廃プラが生まれ、回収もリサイクルもされていない。

再利用より生産拡大に巨額資金

化学エンジニアのジャン・デル氏は「AEPWのプログラムは廃プラの量に対して規模があまりにも小さく、世界中で出ている大量の廃プラを実際に減らすために他でも導入できるものではない」と述べた。

ロイターの昨年10月の報道によると、プラスチック業界は廃プラの再利用や処理のための取り組みを打ち出しているが、再利用よりも生産拡大にはるかに巨額の資金を投入している。安価なプラスチック新製品が大量に出回り、再利用は採算が取れない状態だ。

シェブロン・フィリップスは昨年7月、リニュー・オーシャンズが3月には既に活動を停止していたにもかかわらず、同プロジェクトの作業員がガンジス川で廃プラを回収している動画を利用し、持続可能性への取り組みを宣伝するプロモーションビデオを作成した。

グリーンピースUSAのオーシャン・キャンペーン・ディレクター、ジョン・ホシーバー氏は「地球上で最も金持ちで、最も強力な企業が、小さなコミュニティーで小規模な廃プラ回収プロジェクトを行い、見栄えの良い写真を撮るチャンスを作っている」と指摘。「プラスチックの生産を縮小する以外に廃プラを減らす方法はない」と述べた。

シェブロン・フィリップスはコメント要請に応じなかった。

(Joe Brock記者、John Geddie記者、Saurabh Sharma記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...
→→→【2021年最新 証券会社ランキング】



ニューズウィーク日本版 習近平独裁の未来
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月17号(2月10日発売)は「習近平独裁の未来」特集。軍ナンバー2の粛清劇は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」強化の始まりか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米上院、国土安全保障省向け予算否決 移民取り締まり

ワールド

トランプ政権、温室効果ガス規制の法的根拠撤廃 「米

ビジネス

PayPay、米ナスダックに新規上場申請 時価総額

ワールド

トランプ氏、ベネズエラと「並外れた」関係 石油富豪
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 3
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 6
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 10
    エプスタイン疑惑の深層に横たわる2つの問題
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中