最新記事

ネットビジネス

年収30億円のカリスマインフルエンサー「口紅王子」はなぜ儲かる? 資生堂、カルビーなどもオファー殺到する中国の「ライブコマース」

2020年11月19日(木)15時00分
中島 恵(フリージャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載

彼のインフルエンサーとしての収入の仕組みは主に2つだ。中国のKOL事情に詳しく、日本企業の対中ウェブマーケティングなどのビジネスを手掛ける「クロスボーダーネクスト」の何暁霞社長によると、1つ目は広告収入だ。

李佳琦氏が代表を務める事務所には数百人のスタッフがおり、世界中の企業から仕事の依頼が来る。彼に商品のPRを依頼したい場合、まず企業は自社の商品を李氏が代表を務める事務所に送付し、条件面の交渉をする。そこで最終的に選ばれた商品を李氏がライブコマースで宣伝する。通常、ライブコマースは10~15分程度だ。1日5~6時間ライブコマースをする場合、30~40個の商品を紹介するが、「独身の日(ダブルイレブン)」のように注目されるイベントの場合、広告費は通常よりも高く設定される。

資生堂、カルビーなど日本企業もオファー

2つ目は販売して売り上げた金額のレベニューシェアだ。通常は総売り上げ額の20%以上を報酬として受け取る場合が多いという。李氏の年収は明確には分からないが、何氏によると「2億元(30億円)以上はあるのではないか」と推測する。今春、李氏は上海市内に広さ1000平方メートルの豪邸を1億3000万元(約20億円)で購入して大きな話題となった。

彼はもともとロレアルの美容部員だったが、その整ったルックスと女性目線の話術でたちまち人気となり、「买它」(マイター、Buy itの意味)という中国語のフレーズは彼の代名詞になった。彼が取り上げるのは化粧品、日用品、食品などさまざまで、日本企業では資生堂、コーセー、カルビー、龍角散、近江兄弟社などがある。

李氏や薇娅氏などのトップインフルエンサーは別格中の別格といえるが、今年の「独身の日」のセールでも、彼らをはじめ中国中の有名無名のインフルエンサーがライブコマースを行った。今年とくに目立ったのは、企業(メーカー)の担当者や経営者など、"一般人"がライブコマースを行ったことだった。今年の618(6月18日に行われる、独身の日に続く2番目に大きなセール)には、中国の有名なエアコンメーカー、格力の董明珠会長が自ら出演して話題を集め、売上高も大幅に伸ばしたことから、以後、同じような宣伝効果をもくろむ企業が、経営トップや社員を全面に出して次々とライブコマースへと参入した。

「独身の日」で売れた日本製品は?

その流れは日本にも押し寄せており、資生堂は「独身の日」に合わせ、東京本社と中国杭州のスタジオを生中継して、ブランド責任者や現地法人の担当者らがライブコマースを行った。必ずしも有名インフルエンサーではなく、企業側の担当者から直接、プロ目線での説明を聞きたいという視聴者の声に応えた格好で大好評だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏への量刑言い渡し延期、米NY地裁 不倫口

ビジネス

スイス中銀、物価安定目標の維持が今後も最重要課題=

ワールド

北朝鮮のロシア産石油輸入量、国連の制限を超過 衛星

ワールド

COP29議長国、年間2500億ドルの先進国拠出を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中