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年収30億円のカリスマインフルエンサー「口紅王子」はなぜ儲かる? 資生堂、カルビーなどもオファー殺到する中国の「ライブコマース」

2020年11月19日(木)15時00分
中島 恵(フリージャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載

中国のデータでは、2020年3月現在、ライブコマースの利用者は約2億6500万人で、ネット通販の利用者の37%を占めている。流通額は2018年の段階では2000億元(約3兆円)にもみたなかったが、2019年は約3900億元(約6兆円)となった。2020年末には6000億元(約9兆円)以上になる見込みだといわれており、新型コロナをきっかけに、これからの消費を牽引する救世主的な存在として注目されている。

ライブ感と、その場で質問できる安心感

ライブコマースとは具体的にどのようなものなのか。中国語では「直播(ジーボー)」といい、最も多くの人々が利用している淘宝(タオバオ)のライブコマースなら「淘宝直播」(タオバオジーボー、またはタオバオライブ)という。あるタレントやインフルエンサー(KOL)が、あらかじめ告知していた生放送の時間にアプリを開くと、彼らが画面のこちら側に向かって語りかけ、まるでテレビショッピングのように、宣伝したい商品の特徴や使い心地などについて身振り手振りで説明するというものだ。

画面上では、視聴者が質問を直接書き込めるコメント欄があり、それが次々と表示されていき、タレントやインフルエンサーはそれにその場で答えてくれる。画面の端にはショッピングカートのアイコンがあり、そこをクリックすることで、その商品をすぐに購入することができる。

前述したように、ライブコマースの魅力は「ライブ感」や「臨場感」、「双方向性」だ。そして、商品をさまざまな角度から見たり、動かしたりしてもらえることによって視覚から得られる「情報」もある。中国にとって、もともとメディアは管制メディアであり、政府のプロパガンダ的な存在だったことから、人々はお仕着せの広告を信用しない傾向が強かったが、親しみやすいインフルエンサーがPRすることで信頼感を持つ人が多い。

ライブコマースでは、彼らと直接話せているような感覚もあり、彼らの説得力のある「しゃべり」にも引きつけられるようだ。アプリに表示されている写真を見てクリックする従来型のネット通販よりも、動きのある商品をクリックするほうが楽しいと、「新しいもの好きな中国人」がその新鮮さに飛びついたのだ。

1回の配信で3億円分を売り上げる「口紅王子」

今、中国で最も人気があるインフルエンサーといわれているのは薇娅氏(Viya)と李佳琦氏(Austin)という2人だ。薇娅氏は1985年生まれの女性、李佳琦氏は1992年生まれの男性で、ともに数年前からインフルエンサーとして頭角を現し、今や中国の若者の間では知らない人はいないといわれるほどの「中国人インフルエンサーの2大巨頭」となった。李佳琦は1回のライブコマースで3億円分以上の化粧品を売り上げるといわれ、自ら口紅をつけて、その使用感などを巧みな言葉で表現することから「口紅王子」というニックネームで呼ばれている。

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