最新記事

感染症対策

イタリア、企業はもう体力の限界 高まる新型コロナウイルス「都市封鎖」解除の圧力

2020年4月12日(日)11時03分

イタリアでは国内総生鮮(GDP)の3分の1を占める北部が、新型コロナウイルスで最も大きなダメージを受けている。写真は、封鎖が始まって2日目のミラノ市内。3月11日撮影(2020年 ロイター/Flavio Lo Scalzo)

イタリアでは経済の崩壊を防ぐため、多くの企業や識者が工場の操業再開を求めている。西側諸国で最初に都市封鎖(ロックダウン)に踏み切ったイタリアは、この前例ない措置からどのように脱するのか、世界の注目が集まっている。

同じ議論が、世界中で繰り広げられている。企業が破綻したり、多くの失業者が発生するという取り返しのつかない経済的なダメージが起きる前に、どのくらいの期間、どのくらい厳しい措置を続ければいいのか、と。

最も切迫したジレンマに直面しているのがイタリアである。大半の国より長くロックダウンが続き、新型コロナによる死者数が最も多いからというだけではない。

国内総生産(GDP)の3分の1を占める工業の中心地、北部イタリアが最も大きな打撃を受けているからだ。

「売り上げがゼロなのに、どうして賃金を払えるのか。供給契約を守れる状況にないのに、どうすれば米国の顧客をつなぎとめることができるのか」。イタリア北部の街パドゥアで、従業員50人の産業用絶縁パネルメーカー、チェレニットを経営するジュリア・スベリアードさんは言う。

イタリアの識者約150人はさきごろ、財界団体コンフィンドゥストリア傘下にある日刊金融紙「イル・ソレ24オレ」に、政府に経済活動の再開を促す公開書簡を投稿した。

「社会的・経済的影響によって、恐らくウイルス自体がもたらすよりも深刻な、取り返しのつかないダメージが生じるリスクがある」と訴えた。

イタリア政府が全国規模のロックダウンに踏み切ったのは3月9日。すでに460人以上の犠牲者が出ていた。2週間後、コンテ首相は必要不可欠なものを除き、自動車や衣料品、家具製造などあらゆる企業活動を4月3日まで停止すると発表した。

死者数は容赦なく増え続け、1万6500人を超えた。政府は企業活動の制限を4月13日まで延ばしたが、さらに3週間再延長されるとの見方が広まっている。

ところが、4日に死者数がここ2週間で最小の増加にとどまり、集中治療室(ICU)の患者数も初めて減少すると、感染拡大がピークに達したとの希望が生まれ、新たな局面への関心が高まった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P小幅安、FOMC結果待ち

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、雇用市場に依然底堅さ

ビジネス

米NEC委員長「利下げの余地十分」、FRBの政治介

ワールド

ウクライナ、和平計画の「修正版」を近く米国に提示へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中