最新記事

危機管理

新型コロナウイルス、感染ショックの後に日本を襲う4つの最悪シナリオ

2020年2月28日(金)17時30分
岩崎博充(経済ジャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

つまり、日本で感染爆発が起きた場合には最大で5割前後、消費が落ち込むことを想定しなければならない。ちなみに、東日本大震災では1カ月後には、全体的にみて通常の消費支出に戻っている。しかし、新型コロナウイルスではそうもいかないだろう。最低でも3~4カ月の期間、激しい落ち込みを覚悟する局面もありえる。

世界の動きはどうなるかわからないが、日本の景気後退はかなり大きくなりかねない。

【シナリオ③】
1ドル=125円超は悪性インフレへの入り口か?

ニューヨーク市場では、2月24日からの2日間で2000ドル近い下落となり、株式市場がいよいよ新型コロナウイルスのリスクを意識し始めたと言っていいだろう。アメリカ市場の流れを受けた2月25日の東京市場では、日経平均株価が一時1000円超下落した。

今後もしばらくは、株価が大きく下げることになりそうだが、日本の場合、こうした株価の下落は瞬間的なものでは終わりそうもない。日本は、消費税率アップや大型台風などの影響で2019年10~12月期は、実質GDPが年率換算でマイナス6.3%となった。

そして、次の2020年1~3月期もよほどのことがなければマイナス成長になるはずだ。2期連続でGDPがマイナスになると、いわゆる「リセッション(景気後退)」となり、海外投資家を中心に、日本の株式は大きく売られることになりかねない。ヘッジファンドや投資信託のファンドマネージャーやAI(人工知能)は、「リセッション=売り」とインプットされているからだ。

厚生労働省が、新型コロナウイルスのPCR検査の保険適応をいまだに認めていない現状を考えると、医療システムの崩壊を招くような感染爆発が起こる可能性もある。

そうなると、日本への飛行機の渡航が世界中から止められ、世界からの物資なども供給されなくなる。株価は大きく下落し、円が売られ、金利が上昇(債券価格の下落)することになる可能性が高い。

円安の影響で金融緩和すべき日銀にその余力はもうない

とりわけ心配なのが、新型コロナウイルス感染の世界的な拡大で、本来であれば安全資産であるはずの「円」が買われて円高になるはずが、2月に入って以降、逆の円売り=円安に進んでいることだ。

安全資産であるはずの円だが、感染爆発が起これば1ドル=120円台まではあっという間に行くことになるかもしれない。その場合、円安の「分岐点」になるのは「1ドル=125円」だろう。かつて、日本銀行の黒田総裁が「1ドル125円以上の円安は望まない」という趣旨のコメントを出したことがある。

「黒田ブロック」とも呼ばれているが、日本経済が許容できる円安の目安とも言われている。これを超えてくるようであれば、アベノミクスにとっては、未知の領域に入っていく。

プラス要因としては、日本の製造業、とりわけ輸出産業は潤うことになるが、問題はそのときに世界が旺盛な需要を保っているかどうかだ。とりわけ日本が得意としている電子部品など工業製品の需要がどうなっているのか不安だ。

マイナス要因としては、輸入物価の急激な上昇だ。日本は世界から莫大な量の食料品や石油などのエネルギーを輸入しているが、これらが円安の影響で急騰することになる。本来であれば、こういうときこそ日銀が金融緩和をすべきなのだが、現在の日銀にはその余力がない。マイナス金利拡大は、かえって社会を混乱させる可能性が高い。SARSのときは、日銀は2回金融緩和を実施できたものの、いまその余地は少ない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ドイツ銀行、第3四半期の債券・為替事業はコンセンサ

ワールド

ベトナム、重要インフラ投資に警察の承認義務化へ

ワールド

台湾、過去最大の防衛展示会 米企業も多数参加

ワールド

アングル:日米為替声明、「高市トレード」で思惑 円
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中