最新記事

進撃のYahoo!

フェイスブック・グーグルも独自の報道メディアへ、米国で「一つの時代」が終わる

PLATFORMS, PUBLISHERS, AND THE END OF SCALE

2019年12月11日(水)16時15分
ヌシン・ラシディアン(コロンビア大学ジャーナリズム大学院研究員)

フェイスブックはニュースの敵か味方か(2018年公聴会) WIN MCNAMEE-POOL-REUTERS

<日本では「巨人」Yahoo!が君臨しているが、アメリカではプラットフォーマーとメディアの関係に地殻変動が起き始めた。報道各社はIT大手が用意した土俵で広告収入を得るより大切なことを思い出しつつある。本誌「進撃のYahoo!」特集より>

ネット上の情報流通を支配するプラットフォーム企業が、ここまで深く広くジャーナリズムの仕事に影響力を行使するようになるとは、3年前には誰も想像もできなかっただろう。しかし今や、彼らは自ら独自のニュースを発信するだけでなく、既存の報道メディアの生態系を支える役目も果たしている。
20191217issue_cover200.jpg
こうなると、プラットフォーム企業と報道メディアの力関係は嫌でも変わらざるを得ない。デジタル時代のジャーナリズムの在り方を研究する米コロンビア大学トウ・センターは先ごろ発表した3回目の年次報告「プラットフォームとパブリッシャー(新聞・出版)──一つの時代の終焉」で、この変化の行方を探った。

当然のことながら、既存メディアは変化への対応に苦慮している。巨大なプラットフォーム企業に頼れば数の力で広告収入が増えるという期待は、あっさり裏切られた。もはや広告頼みでは安定した収入を確保できない。現実は単純かつ厳しい。広告収入が干上がる前に、定期購読や会員登録などで安定した収入源を確保しなければ生き残れない。

しかも、この点に関してプラットフォーム企業は頼りにならない。彼ら自身が独自の報道メディアになろうとしているからだ。今年7月にはグーグルが、既存の地方紙に取って代わるニュースの編集拠点の開設を発表した。場所は米オハイオ州のヤングズタウン。最後まで頑張っていた地元の日刊紙が、先ごろ廃業に追い込まれた町だ。

この動きは、今まで既存の報道メディア支援に力を入れてきたグーグルの方針転換を意味する。昨年までの同社は(ライバルのフェイスブックと合わせると)既存の報道メディアに対して合計6億ドルの支援を約束していたからだ。

しかし今、プラットフォーム企業は独自のニュース編集室を持とうとしている。10月に始まったフェイスブックのFBニュースもそうだが、今後は「何を報道するか」を彼ら自身が決めていくということだ。従来は(グーグル・ディスカバーのように)アルゴリズムだけで掲載記事を選んでいたが、今後は経験豊富な編集者や記者を独自に雇い、記事の取捨選択にはそういう人たちの判断を加味していくという。

トウ・センターの調査に応じた報道メディアの多くは「一つの時代」の終わりを口にした。何億人、何十億人ものユーザーを抱えるプラットフォーム企業のおかげで莫大な広告収入がもたらされるなら編集権限や読者との絆を失ってもいい(だからグーグルなどのサイトで目立つためなら何でもしよう)。そう思えた無邪気な時代の終焉である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン最高指導者、ホルムズ海峡管理「新段階」と表明

ワールド

レバノン、イスラエルとの協議に向け一時停戦提唱 ヒ

ビジネス

IMF、世界成長率を下方修正へ 金融支援需要は最大

ビジネス

米2月PCE価格指数、0.4%上昇に伸び加速 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポケモンが脳の発達や病気の治療に役立つかも
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 6
    戸建てシフトで激変する住宅市場
  • 7
    高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界…
  • 8
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    「嬉しすぎる」アルテミスII打ち上げのNASA管制室、…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 7
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 8
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 9
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 10
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中