最新記事

投資の基礎知識

売買単位の統一と株式併合で、株価にはどんな影響があるのか

2017年8月2日(水)12時51分
岡田禎子 ※株の窓口より転載

売買単位統一と同時に起こること

以下は、2017月9月に売買単位の統一を予定している銘柄です。

kabumado170802-chart1.png

変更内容の欄には、売買単位が「1000株→100株」とあり、備考欄を見ると、同時に株式併合(10株→1株、5株→1株、2株→1株)が行われる銘柄もあることがわかります。

「株式併合」は「株式分割」とは逆で、2株を1株に併合する、といったケースです。たとえば1000株保有の株主は、2:1の株式併合によって500株保有となりますが、理論上、株価は2倍に調整されるため、併合前後で資産価値は変わりません。

売買単位の統一の推進と同時に、東京証券取引所では必要最低投資金額を「5万〜50万円」とすることを推奨しています。NISAの枠にも収まりやすく、個人投資家が流入しやすいためです。これが、売買単位統一と同時に株式併合を行うか否か、という対応の違いに表れています。

ここでもう一度、上のリストを見てみましょう。すると、3つのパターンが読み取れます。

1.売買単位の変更のみ

1000株単位だったのが100株単位になりますので、必要最低投資金額が10分の1に下がります。たとえば歌舞伎座<9661>なら、7月27日の終値は5490円なので、購入するには549万円必要だったのが54万9000円で済むことになります。

必要最低投資金額が下がることで、上で説明したように流動性が向上し、株価にプラス効果が期待できます。

2.売買単位の変更と同じ割合で株式併合

売買単位の変更とともに株式併合が行われます。その際、売買単位の変更(1000株→100株)と同じ10分の1の割合で株式併合が実施されます。

売買単位が10分の1になりますが、株式併合によって株数も10分の1になり、株価は10倍になります。こうすることで、たとえば元の必要最低取引金額が50万円未満だった場合、投資単位の水準を維持することができます。

株価367円(7月27日終値)の近鉄百貨店<8244>なら、必要最低投資資金は367円×1000株=36万7000円だったのが、100株単位となった場合、367円×100株=3万6700円となり、東証がめざす投資単位の水準(5万〜50万円)を維持できません。

また、企業にとっては株主増加による管理コストが上昇し、個人投資家にとっても株を購入する際のコスト割合が高くなります。

そこで、株式併合によって10株を1株とすることで株価を10倍の3670円にします。そうすると、3670円×100株=36万7000円というように必要最低投資金額を維持できます。したがって、株価への影響も理論上はありません。

【参考記事】株価が割安かどうかを見極める指標の「三角関係」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩

ワールド

米民主上院議員が25時間以上演説、過去最長 トラン

ワールド

ロシア政府系ファンド責任者が訪米、2日に米特使と会
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中