売買単位の統一と株式併合で、株価にはどんな影響があるのか
3.売買単位の変更とは異なる割合で株式併合
売買単位が1000株→100株になると同時に、5株を1株(あるいは2株を1株)にする株式併合が実施されます。
たとえば日本色材工業研究所<4920>の株価は881円(7月27日終値)。現時点で購入するには、881円×1000株=88万1000円が必要ですが、5:1の株式併合が行われると株価は5倍の4405円となり、売買単位は100株になるので、4405円×100株=44万500円。東証がめざす50万円以下の必要最低金額に収まることになるのです。
このように、売買単位の変更と株式併合を同時に行うことで、投資単位の調整が行えます。必要最低投資金額が下がることで、流動性の向上が期待され、株価へのプラスの影響が期待できます。
必要最低投資金額を下げるための株式分割も
こうした動きに伴い、すでに100株単位になっているものの、必要最低投資金額が50万円以上の銘柄については、それを引き下げるために「株式分割」を実施する企業が増えることが考えられます。
(参考記事)株式分割は本当にプラス効果? あの"高値の花"にも手が届くけど
株式分割が実施された場合、これまで必要最低投資金額が高すぎて手が届かなかった銘柄が、より少ない資金でも投資できる水準に引き下がります。もちろん銘柄次第ですが、流動性が向上し、株価にとってはプラス効果が期待できます。
実際の株価はどうなるのか?
それでは、実際の株価の動きを見てみましょう。こちらは2016年10月1日付で1000株→100株の売買単位の変更を実施した(株式併合は行わない)三菱電機<6503>のチャートです。
売買単位の変更前は、必要最低投資金額が160万円近くの「値がさ株」でしたが、変更後は16万円で投資できるようになりました。10月末に公表された第2四半期決算で通期業績予想を上方修正するなど好調だったことも相まって、出来高も増加し、11月には年初来高値更新、その後も上昇を続けました。
売買単位変更によって必要最低投資金額が下がる→好業績→資金流入→株価上昇、と株価にとってプラス効果となる好例となったことが見て取れます。
判断材料のひとつとして
売買単位の変更は、個人投資家にとっては、必要最低投資金額が下がることで買いやすくなるため、NISAや小口での分散投資も可能になります。また個人マネーの流入が増大することで、株式相場全体の下支え要因となり、個人投資家にとっても、株式相場全体にとってもメリットが多く、プラス効果が高いと言えそうです。
一方で、株価にとっては、「売買単位の変更=プラス効果で株価上昇」ということには必ずしもつながりません。
株式投資においては、個々の銘柄の業績や成長性、株価のトレンドなど、あらゆることを考慮して、総合的な判断で投資を行うことが重要です。その上で、「売買単位の変更」も判断材料のひとつとして活用してみてください。
[筆者]
岡田禎子[おかだ・さちこ]
証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう、執筆、セミナーなどで活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。
日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)