最新記事

ニュースデータ

日本の大学は「レジャーランド」だからダメなのか?

知識や技術の習得では日本の大学への評価は低いが、モラトリアムという大切な機能を果たしている

2015年12月22日(火)17時15分
舞田敏彦(教育社会学者)

「自由を満喫」という点では日本の大学の評価は他国に比べて断トツに高い Neustokimages-iStock.

 学生が本分の学業をそっちのけにして遊びやアルバイトに明け暮れる「レジャーランド」だと、日本の大学が批判されて久しい。大学教育が卒業後の仕事に生かされていないという、職業的レリバンス(意義)の低さも指摘されている。このような現状は卒業生の評価にも表れている。

 内閣府が2013年に実施した『わが国と諸外国の若者の意識に関する調査』では、欧米とアジアの主要6カ国を対象にして、自分が最後に出た学校の教育的意義を尋ねている。学校で習得した知識や友人関係など8つの項目について、どれほど意義があったかを問う形式だ。この調査から大卒者のサンプルを取り出し、「意義があった」という最も強い肯定の回答の割合を国ごとに整理すると、<表1>のようになる。6カ国の最高値は赤字、最低値は青字にした。

maita151222-chart01.jpg

 大学教育に対する卒業生の評価は、国によってかなり差が出ている。欧米では、知識や技術の習得、資格の取得といった機能的側面について意義を評する者が多い(おおむね4割以上)。ドイツでは卒業生の7割以上が、知識や技術の習得に関する大学教育の意義を高く評価している。

 これに対して日本は、これらの意義を評価する者の割合は6カ国の中で最も低い。数字が最も高いのは「自由を満喫」の40.3%で、これだけは他のどの国よりも高い。卒業生の主観評価だが、日本の大学の実態をよく表している。「レジャーランド」と形容されても仕方がないところはある。

 むろん、大学教育の位置付けは国によって異なる。ドイツでは実践的な職業教育を行う専門大学の比重が高い。日本もこうした方向への改革が志向されていて、職業教育を中心的に行う新大学(専門職大学)の創設が議論されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局

ワールド

ポーランドの2つの空港が一時閉鎖、ロシアのウクライ

ワールド

タイとカンボジアが停戦に合意=カンボジア国防省
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中