最新記事

シリーズ「仕事を科学する」

フレックスタイム制をうまく機能させる方法

2015年10月29日(木)11時31分

wcbook151029-b.jpg

 まず、「言語コミュニケーション」と「非言語コミュニケーション」について――。

 現代人のコミュニケーションは、その約80%が身振りや表情、あるいは匂いや手触りによって行われています。言葉を音声や文字で表現する「言語コミュニケーション」は、約20%に過ぎません。思いのほか、動物的な五感を頼りにしているわけですが、なかでも視覚が重要な位置を占めています。人間がコミュニケーションをとるとき、大脳の視覚野が活発になることがわかっています。

 とはいえ、ビジネスの現場では、やはり言語コミュニケーションが中心になります。「相手の瞳をじっと見つめて......」などという場面はめったにないでしょう。

 そこで、言語コミュニケーションについて、詳しく見ていきましょう。

 まず、言語コミュニケーションには4つの技術があります。すなわち、「聞く」「話す」「読む」「書く」という4つの言語スキルです。そして、これらが使われている頻度は、それぞれ45%、30%、15%、10%という比率です。つまり、言語コミュニケーションのなかで半分近くが「聞く」ことにあてられているのです。相手の話を上手に聞くことがいかに大切か、これでよくわかります。

 次に、この4つの言語スキルを両極併存の発想で検証してみましょう。

 そうすると、「音声情報」と「文字情報」に分けることができ、その割合はそれぞれ75%、25%となります。

 1人1台のパソコンで全員がメールアドレスをもったとしても、劇的にコミュニケーションがよくなることはありません。

 なぜなら、メールでカバーできる文字情報は、言語情報の25%でしかないからです。残りの75%の音声情報を、どのようにマネジメントするかが大きな課題になります。

 さらに、コミュニケーションを「受信」と「発信」に分けて考えることもできます。「聞く・読む」で60%、「話す・書く」で40%ですから、その比率はおおむね6対4になります。

 多くのマネジャーがコミュニケーションで苦労しているのも、このあたりに原因がありそうです。発信と受信の「量」が逆転すると、効果的なコミュニケーションから遠のいてしまうのです。発信が受信を大幅に上回るコミュニケーションには、なんらかの問題があると疑ったほうがいいでしょう。

 こうしたロジックを押さえたうえで、フレックスタイム制を導入するなら、生産性向上も十分期待できます。

 逆に、フレックスタイム制が機能していない組織は、制度導入の是非を問う前に、社内コミュニケーションの実態を把握する必要があるでしょう。

[ツール] ボイスメール

 ボイスメールが強力なサポートツールとなるはずです。本書がボイスメールにこだわるのは、見落とされがちな音声情報の重要性を再認識してほしいからです。

 すでに述べたように、音声情報は気持ちや微妙なニュアンスを伝えるのに格好のツールなのです。丸紅テレコムでの商品供給の再開を願うばかりです。

※抜粋第3回:会議を減らすだけでは生産性が上がらない理由 はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

SBGとエヌビディア、ロボティクス新興に投資検討 

ワールド

独外相、中国の輸出規制による欧州産業混乱巡る問題解

ビジネス

パラマウント、ワーナーに敵対的買収提案 1株当たり

ワールド

EU、自動車排出量規制の最新提案公表を1週間延期 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の…
  • 10
    米、ウクライナ支援から「撤退の可能性」──トランプ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中