パジャマで出社でもOKのほうが、アイデア満載の会社になる
五輪エンブレム問題で揺れる今こそ再確認したい、ロングセラーに記された発想術の本質(後編)
まずは楽しむこと いいアイデアを思いついたから楽しいのではなく、楽しんでいたからいいアイデアを思いつくのだ IPGGutenbergUKLtd-iStockphoto.com
『アイデアのつくり方』(ジェームズ・W・ヤング著、今井茂雄訳、CCCメディアハウス)という本がある。原書の初版が刊行されたのは、なんと1940年。この邦訳版も初版は1988年で、四半世紀に及ぶ発想術のロングセラーである。
ただし、この『アイデアのつくり方』、わずか104ページという薄い本で、しかもそのうち26ページが、科学雑誌『Newton』初代編集長で東大名誉教授の故・竹内均氏による解説である。
そこで、「では、具体的にどうしたらアイデアを生み出せるのか?」という要望に応えたのが、アメリカの広告業界で40年近いキャリアを積んだジャック・フォスターによる『新装版 アイデアのヒント』(青島淑子訳、CCCメディアハウス)だ。
とはいえ、こちらの『アイデアのヒント』も実は、旧版が1999年、新装版が2003年刊行と、15年以上日本で支持され続けてきたロングセラー。随所に記された「ひらめくためのハウツー」が、これだけ仕事の環境が変わった今も古びないのは驚きだ。
アイデアとは何か、独創性とは何か――。東京五輪エンブレム問題などで関心の高まった今こそ、これらのロングセラーをひも解いて、発想術の「本質」を再確認してはどうだろう。ここでは、『新装版 アイデアのヒント』から「第1章 アイデアって何だろう」と「第2章 もっと楽しもう」を抜粋し、前後半に分けて掲載する。
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『新装版 アイデアのヒント』
ジャック・フォスター 著
青島淑子 訳
CCCメディアハウス
『アイデアのつくり方』
ジェームズ・W・ヤング 著
今井茂雄 訳
竹内 均 解説
CCCメディアハウス
※「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ」とヤングは言った:抜粋記事の前編はこちら
もっと楽しもう
「ゲーテを読んでいると、ひょっとして彼は読者を笑わせようとしているのではないかと思うことがある」
――ガイ・ダベンポート(アメリカの小説家)
「深刻になるのは、浅はかな人間の逃げにすぎない」
――オスカー・ワイルド
「楽しむ」ことをアイデアを得るための心の準備として最初にもってきたのは、偶然ではない。わたしの経験からすると、これが一番大切なことだと言ってもいい。なぜだか説明しよう。
広告代理店のクリエイティブ部門では、ふつうコピーライター一人とアートディレクター一人がチームを組んで一つのプロジェクトにかかわる。わたしのいた会社でもそうだったが、会社によっては三つか四つのチームを同じプロジェクトで競合させるケースもある。そんなとき、最高のアイデア、最高の広告、最高のテレビコマーシャル、最高の屋外広告を提案するのがどのチームかはいつもはっきりしていた。
それは一番楽しんでいたチームだ。