HBS教授が教える、「使える部下」の育て方(前編)
"正しい疑問"を活用すれば「優秀な部下がいない」と言い訳することもなくなる
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ゴールドマン・サックスに22年間勤務し、副会長まで務め上げた後、ハーバード・ビジネススクール(HBS)教授に。そんな輝かしいキャリアを持つロバート・スティーヴン・カプランによれば、「卓越したリーダーシップを発揮するのに、すべての問いの答えを知っている必要はない」。
うまくいくリーダーと、うまくいかないリーダーの違いは何か。どんなリーダーでも例外なく、自信とやる気をなくす時期を経験する。違いが表れるのは、そうしたときに"正しい疑問"を持てるか否かだと、カプランは言う。
カプランの新刊『ハーバードの"正しい疑問"を持つ技術 成果を上げるリーダーの習慣』(福井久美子訳、CCCメディアハウス)は、ビジョンの描き方から、フィードバックの活用法、迷走した組織の立て直し方まで、大小を問わず組織を率いる人に"正しい疑問"という武器を授けてくれる1冊。
ここでは、「第4章 部下を育てる技術――後継者を育成する」から一部を抜粋し、前後半に分けて掲載する。
『ハーバードの"正しい疑問"を持つ技術
――成果を上げるリーダーの習慣』
ロバート・スティーヴン・カプラン 著
福井久美子 訳
CCCメディアハウス
取り巻きがひしめくチーム
歴史家のドリス・カーンズ・グッドウィンはエイブラハム・リンカーンの内閣を「ライバルがひしめくチーム」と表現しました。そして、リンカーンの勇気ある(そして時には信じがたい)リーダーシップは、このチームに芽生えた緊張感と成果のおかげではないかと考察しました。多くのリーダーたちが、この歴史的な人物の強いリーダーシップに注目し、学んできました。その一方で、誤った道へと進んだ挙げ句に「取り巻きがひしめくチーム」を作ってしまう企業のリーダーも大勢います。
なぜそのような選択をするのでしょうか? 現在の地位に就くまでに何年も努力した挙げ句に、失敗したくはないはずなのに? たとえ意識していなくても、リーダーは、有能な部下のことをいつか自分の地位を脅かすであろう存在だと考えています。「取り巻きがひしめくチーム」を作ってしまうリーダーも、有望な後継者を育てれば、会社はさらに強くなることを頭では理解しています。しかし、心の底に巣くう不安に理性が負けてしまうのです。
残念ながら、私が見た企業のなかには、できるだけ長く今の地位に居続けたいと執着し、自らの地位を守るために、多彩な人材を育てる気などさらさらないリーダーが何人もいました。しかもそのなかにはCEOもいました。また、ゆくゆくはCEOになりたいと望む、若手の部門長もいました。こうしたリーダーは、現在の地位を安泰と思っておらず、その不安を助長するような行動を取りたがりません。後継者育成計画や、能力開発についてあたかも熱心に語ることもあります。後継者育成計画を導入しても、結局は、自分だけに忠実なお気に入りの部下を昇進させようとします。かつて一緒に働いたことがあり、自分と考え方が似ているお気に入りの部下を、です。そのことについて疑問を投げかけると、彼らは慎重に「他にも優秀な社員はいるが、彼らには及ばないからね」などと釈明するでしょう。