最新記事

野生動物

象牙を燃やしてゾウを守る最後のキャンペーン

国際的に広がる象牙焼却の動きは密猟防止に効果を発揮するか

2015年4月2日(木)16時51分
ルーク・ハースト

象牙はゾウだけのもの 押収した象牙を燃やすレンジャーたち(エチオピア) Tiksa Negeri-Reuters

 マラウィ政府はアフリカゾウの密猟防止キャンペーンの一環として、4月2日に押収した密猟象牙など6・6トンの焼却を予定している。数百万ドルの価値がある象牙だ。

 ケニアとエチオピア政府も先月、押収した密猟象牙を焼却したばかりだ。ケニアではウフル・ケニヤッタ大統領が15トンの象牙の山に火をつけ、エチオピアでも各国の報道陣が見守るなか6トン余りが燃やされた。

 マラウィ政府も、「密猟と闘う「最大の政治的意志を見せつける」ために、ピーター・ムタリカ大統領が象牙の焼却に立ち会う予定だ。

 世界自然保護基金(WWF)によると、象牙目当ての密猟でアフリカゾウの生息数は1950年代から急減。先月末にボツワナで開催されたアフリカゾウ・サミットでは、数十年で絶滅するおそれがあると、専門家らが警鐘を鳴らした。

 世界の象牙の違法取引は98年以降3倍に増え、象牙目当ての密猟でアフリカゾウは15分に1頭のペースで殺されていると、動物保護団体、国際動物福祉基金は発表している。

 こうしたなかで、唯一希望が持てるのは押収した象牙を処分する動きが広がっていることだと、野生生物保護団体、ボーン・フリー財団(BFF)のアダム・ロバーツCEOは話す。「アメリカ政府が象牙の在庫を破壊し、フィリピンがそれに続き、アフリカ諸国にもこの慣行が急速に広がりつつある。これは重要な動きだ。各国政府が『象牙を身につけていいのはゾウだけだ』と公然と宣言していることになる。こうした宣言はアフリカ大陸だけでなく、世界中に影響を与えるだろう」

 89年のワシントン条約締約国会議でアフリカゾウは絶滅のおそれがある種に分類され、象牙の国際取引は全面的に禁止された。BFFによると、この禁止措置で象牙の需要が低下したおかげで、アフリカゾウの生息数はある程度回復した。

 しかし、97年の締約国会議で、ゾウの生息数が回復傾向にあるボツワナなど南部アフリカの4カ国の象牙については、国際的な監視の下で1回限りの取引が認められることになった。この決定で象牙取引が一部解禁されると、特に富裕層が増えた中国で象牙の需要が急増し、再び密猟が盛んになったと、BFFは指摘している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

26年の米成長率予想2%に上振れ、雇用は低調に推移

ワールド

元FBI長官とNY司法長官に対する訴追、米地裁が無

ワールド

再送-トランプ氏、4月の訪中招待受入れ 習氏も国賓

ワールド

米・ウクライナ、和平案巡り進展 ゼレンスキー氏週内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 10
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中