最新記事

知っておきたい外資系の流儀

2012年11月13日(火)13時21分
大橋 希(本誌記者)

──「働くには向き、不向きがあるので、無理して外資にいかなくてもいい」と書いている。向いているのはどんな人か?

 まず大前提として「体が丈夫な人」。極限状態で長時間働ける強靭な体力。これが必須条件と言っていいかもしれない。

 それに加えて外国が好きだったり英語が好きだったりと、国際的なるものが好きな人。「世界で勝負してやる!」というような上昇志向が強い人。エネルギーレベルが政治家や芸能人ばりに高くて、日本企業でははみ出してしまう人。20代、30代で成功しようという気概が強い人。お金を稼ぐために無心で頑張れる人。それからものすごい密度でいろいろなことが起きる世界だから、それを跳ね返せる、もしくは素通りできるタフさも必要。鈍感であればあるほど有利だと思う。

 とにかく外資系向きの「心」と「体」が重要。英語ができる、できないといったスキルは努力すればいくらでも身に付けられるので、必須条件ではない。

──そういう意味では、女性は不利だろうか?

 不利かもしれないが、外資系はダイバーシティー(多様性)を重視するので、女性が活躍するほど企業の実績が上がるという論理がある。それに基づいて女性を全体の何%、管理職に何%など数値目標を決めている企業が多いため、日本企業に比べればキャリアアップの可能性は大きいと言える。

 先日、次作のために大手日本企業で働く女性を取材したが、給与や昇進システムで、未だにものすごく差別されていることが分かって愕然としてしまった。同じ職位でも、女性の方が圧倒的に給与が低かったり、男性以上に長時間働いている人でも出世が2段階ぐらい遅れていたり。組織・人事専門のコンサルタントによれば、一流と言われるグローバル企業ではこういう男女差別はあまり見られないという。

 ただ、家庭と両立できている人はそんなにいないのではないか。やはり全部は手に入れられないのかな、と思う。中には全部をこなせるスーパーウーマンもいるが、普通の人ではないと思ったほうがいいかもしれない。安易にそこを目指すと、落ち込むばかりだから(笑)。

──アメリカなどでは議論やプレゼンテーションの力を小さい頃から鍛えている。日本人はその点がまだ足りないと言われるが、外資ではそうした能力をもともと持っている人がうまくいく?

 日本人で、英語でのプレゼンテーションが最初から上手な人はあまりいない。いま上手な人は、すごく努力している人だと思う。コミュニケーションやプレゼン能力は努力によって身に付けることができる。英語はネイティブでもないし、アメリカに住んだこともないのに高い地位に就いている人は、例えばプレゼンの予行演習を100回もやったりと、ものすごく頑張っている。

 アメリカで教育を受けた人が強いと言えば強い。でも、やる気さえあれば大人になってからでもそうした力は鍛えられる。プレゼンは中身が重要だろう、と思う人もいるかもしれないが、そうじゃない。外資系企業では形が整って初めて、中身を見てもらえるし話を聞いてもらえる。成功している人は、聞いてもらえるプレゼンにするためにすごく工夫している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

仏、来年半ばに新たな志願兵役制導入へ 18-19歳

ビジネス

ドイツ消費者信頼感指数、12月は予想通りマイナス2

ワールド

ウクライナ、EUに凍結ロシア資産活用の融資承認を改

ワールド

米韓軍事演習は「武力」による北朝鮮抑止が狙い=KC
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 9
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 10
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中