最新記事

G20

世界経済の命運は中国の手に

各国首脳が集まって何を話し合っても、中国が態度を改めないかぎり景気回復は見込めない

2010年11月11日(木)17時26分
ロバート・サミュエルソン(本誌コラムニスト)

中国頼み 胡錦濤・国家主席は人民元改革と内需拡大に応じるか Tim Chong-Reuters

 世界経済の「バランスを取り戻す」のは、理屈の上は単純な話だ。経済危機以前の世界では、アメリカを中心とする一部の先進国がカネを浪費する一方、中国を中心とする一部の途上国はカネを貯めこみすぎていた。浪費国は巨額の貿易赤字を出し、貯蓄国は巨額の貿易黒字を出すという形で、両陣営は互いに補い合ってきた。

 だが経済危機を境に浪費国の消費が冷え込むと、事態は一変。資金を貯め込んでいる国がもっとカネを使うようにならなければ、世界経済は長期的な景気低迷に陥る。為替レートや補助金、関税を操作することで、各国は弱い需要の食い合いをするかもしれない──。

 これが、「通貨戦争」や保護主義、経済的ナショナリズムなどと称される最近の経済的衝突の一般的な形だ。先進国が失業率の高さに苦しむなか(アメリカは9・6%、フランスは10・1%、スペインは20・5%)、各国が国内経済や国内の雇用を守る政策を拒むのは一段と難しくなるだろう。諸外国が同じように国内優先の態度を取るなら、なおさらその傾向は強まるだろう。このシナリオを回避することが、11月11〜12日にソウルで開かれる世界20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)の中心課題となる。

 もっとも現実には、世界経済がバランスを取り戻せるかどうかは、「中国は変わるのか」という一点にかかっている。

 世界第2位の経済大国となった中国は長年、重商主義的な(つまり自国の輸出産業を優遇する差別的な)経済政策を取ってきた。おかげで膨大な貿易黒字が生まれ、雇用が劇的に拡大。世界中が好景気に沸いている間は、中国のそうした姿勢も大目に見られてきた。
実際、2007年には貿易黒字を中心とする中国の経常黒字は、GDP(国内総生産)の11%に達していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権

ワールド

米空港で最大20%減便も、続く政府閉鎖に運輸長官が

ワールド

アングル:マムダニ氏、ニューヨーク市民の心をつかん

ワールド

北朝鮮が「さらなる攻撃的行動」警告、米韓安保協議受
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中