金融危機モンスターはまだ生きてる
ゴールドマンが最高益を上げダウが9000ドルを回復しても、複合的巨大金融機関という危機の時限爆弾は放置されたままだ
日没の街 今程度の改革案では、危機の再発は防げない Mike Segar-Reuters
ゴールドマン・サックスとJPモルガン・チェースは巨額の利益を上げ、ダウ工業株30種平均は9000ドルの大台を回復し、バラク・オバマ米大統領も非常時モードを脱して医療保険改革に取り組み始めた。
ホラームービーは終わったように見える。だがハリウッド映画のお決まりのエンディングのように、誰もが死んだと思ったモンスターは、実はまだ生きている。時期尚早な自己満足のなかで忘れられているが、金融崩壊をもたらした大元の問題はまだ解決されていない。
それは、金融システムにかくも破壊的な影響をもたらすため潰すことのできない巨大金融機関の取引をいかに把握し、コントロールするかということだ。オバマ政権の発足から6カ月経ったが、いまだにこの問題に対処するための筋の通った提案は行われていないし、ティモシー・ガイトナー財務長官とベン・バーナンキFRB(米連邦準備理事会)議長の間には深刻な意見の相違がある。
システミック・リスクは誰が監視するのか
7月22日の上院公聴会で、共和党のボブ・コーカー上院議員(テネシー州選出)は、システミック・リスクを監視するという途方もなく複雑な仕事をやれる人間は誰一人としていないと思うと、バーナンキに言い放った。コーカーはその後の取材で私に言った。「(金融システムそのものを脅かす)システミック・リスクとは何かということと、監督当局はいかなる権限をもつべきかということについては今、答えより疑問のほうがはるかに多い。この一週間でそれが明らかになった」
その通りだ。ガイトナーは7月24日の下院公聴会で、システミック・リスクはFRBが監督すべきだと6月に発表した金融規制改革案と同じ主張を繰り返した。「FRBの権限を発展させ、相互に密接なつながりをもつ巨大金融機関すべてを監督する責任を一元化すべきだ」と、ガイトナーは証言した。
また、オバマ政権はシステミック・リスクを監視するため新たに金融サービス監督協議会を作るつもりだとも言った。だがガイトナーによると、同協議会は「最大級で複合的で相互につながりの深い金融機関を監督する責任は負わない」ことも明確にした。協議会には、そうした監督責任を負い、金融危機に対応するだけの「組織力も責任能力もない」からだ。
ガイトナーは6月にも、「火事を消さなければならないときに協議会を招集している暇はない」と痛烈に核心を突いた。「その役割を果たすのに最適の地位にあるのはFRBだ」
だがバーナンキは7月24日の下院公聴会で、FRBは超監督機関にはなれないと強い調子で証言した。彼によれば、FRBは銀行持ち株会社を監督する役割に徹するべきだという。銀行持ち株会社というのは、春にストレステスト(資産査定)を受けた大手金融機関19社を指すようだ。「FRBにはシステム全体を広く」監視する「資源も権限もない」と、彼は言う。「FRBが広い意味で経済を監視しているのは明らかだが、今求められているような詳細までは関知していない」