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自分を創る音の風景

vol.3 バレエ・ダンサー 熊川哲也さん

2014年05月22日(木)12時01分

──2007年、35歳のときは怪我(右膝前十字靭帯損傷)でしばらくダンサーとしての活動ができなかった時期がありますよね。そのころ心の支えになった曲はありましたか?
「あのときは本当にダメかと思って......それまで飛べていたものが飛べないし、身体のバランスがズレていることも自分で分かるんですね。そんななか、ある劇場のこけら落としとしてベートーヴェンの"第九"に振り付けをしたんです。"第九"は世界音楽文化遺産みたいなものじゃないですか。それに対して振り付けという色をつけるというのはリスキーなことでもありますよね。でも、それをやりきることによって、僕自身助けられました。本当にターニングポイントになった舞台だったと思いますし、あの曲には感謝してます。そういえば......感謝の気持ちを込めて後に"第九"の初刷りの楽譜を手に入れたんですよ(笑)」

熊川哲也さん──(取材陣一同)おお!(笑)
「ベートーヴェンが亡くなる1年前、1826年に200部だけ刷られた初版で......という自慢でした(笑)」

──そういう風にオリジナルの楽譜も集めていらっしゃるんですか?
「そうでもないですね。ただ、チャイコフスキー直筆のサインは持っています。1896年に書かれたもので......これも単なる自慢です(笑)」

──なるほど(笑)。では、舞台上でバレエ・ダンサーはどのように音楽に向き合うべきだとお考えですか?
「我々は音符なんです。何も考えず、音楽に対して瞬時に反応できるか・できないか。ひとつひとつのノートを身体で表現するためには考えていたら遅いんです。だから、音楽との向き合い方としては何も考えないことが重要。僕らは音楽に<踊らされる>存在なんですよ。もちろんダンサーは無音でも踊れますし、ハートビートでも踊れるけれど、舞台上のバレエ・ダンサーはどんな音でも<踊らされる>んですね」

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