コラム

「時間はロシアの味方」の意味──苦戦と屈辱が続くも「プーチンの戦争」は今年も終わらない

2023年01月27日(金)13時00分

230124p18_UKH_03.jpg

兵士と共に新年の国民への挨拶を行うプーチン MIKHAIL KLIMENTYEVーSPUTNIKーKREMLINーREUTERS

この戦争のとりわけ恐ろしい点の1つは、プーチンが諦めることはないということだ。自身をロシア帝国の創始者であるピョートル大帝になぞらえるプーチンにとって、敗北は許されない。ウクライナを征服して支配下に置くことの意義とてんびんにかければ、途方もない数の死者が出ても大した問題ではないと考えかねないのだ。

核戦争に発展するのではないかという不安の声も高まっている。実際、ロシアの軍事ドクトリンでは、ロシアの国家存続が脅かされれば核兵器による攻撃が許される。

アメリカや西欧諸国は、ロシアが戦術核を使用したとしても、核兵器で対抗することはしないという方針を示唆している。エスカレーションを避けるという意味では理にかなった姿勢だ。しかし、皮肉なことに、核による報復がないと見切ったプーチンが核のボタンを押しやすくなるという側面は無視できない。

現在、プーチンが自身の手柄と位置付けてきた2つの歴史的業績、すなわちロシア経済の再生とクリミアの併合が覆されかねない状況になっている。欧米などの経済制裁がいよいよ効果を発揮し始めており、しかもウクライナは東部の奪還に成功している(ことによるとクリミアも奪還するかもしれない)。

このような状況で、プーチンがロシアの国家存続が脅かされていると判断し、核兵器の使用を正当化しないと言い切れる人はいないだろう。核兵器の使用にまでは踏み切らないとしても、ロシア軍の攻勢がさらに激化する可能性は十分にある。

ロシアは、既に国際社会で孤立している。国際世論の厳しい非難を浴びても失うものはほとんどない。しかも、戦争の結末がどうなるにせよ、ロシアはこの戦争により屈辱を味わっている。強大だったはずのロシア軍が張り子の虎にすぎなかったことが白日の下にさらされたのだ。

ロシア人のアイデンティティーの多くの部分を占めるのは、勇猛果敢な強さへの誇りと、近隣諸国に対する優越意識だ。私の知人のロシア人の中には、今回の戦争に強く反対し、抗議してロシアを離れた人たちもいる。しかし、彼らですら、ロシア人よりもウクライナ人のほうが聡明で勇敢だという評価には、いら立ちをあらわにする。

自国より圧倒的に弱いはずの隣国に戦場で敗れるようなことがあれば、近隣諸国に対する優越意識を保つことは難しい。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB理事ら、インフレ警戒 利上げは慎重に見極め

ワールド

台湾輸出受注、2月23.8%増 予想下回る

ビジネス

ユニリーバの食品事業、米マコーミックが買収提案

ビジネス

アマゾンが再びスマホ開発、「Transformer
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 ──「成功」が招く自国防衛の弱体化
  • 4
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    原油高騰よりも米国経済・米株市場の行方を左右する…
  • 9
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 10
    「嘘でしょ!」空港で「まさかの持ち物」を武器と勘…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story