コラム

人気と権力が最高潮に達したプーチンがなぞるロシア皇帝の道

2022年05月23日(月)11時40分

NW_PTN_02.jpg

クリミア併合8周年の記念コンサートで掲げられた「プーチン支持!」の幕(3月18日、モスクワ) PAVEL BEDNYAKOV-RIA NOVOSTI HOST PHOTO AGENCY-REUTERS

一方、実質GDPは1992年に15%下落し、1993年は9%、1994年は13%、1995年と1996年はそれぞれ4%縮小した。1997年にようやく1%弱のプラス成長に転じたものの、翌年にはルーブル建てロシア国債がデフォルト(債務不履行)に陥った。

ロシア当局が事実上の通貨切り下げに踏み切った後、ルーブルの価値(対ドルレート)は9カ月で半値、10カ月で3分の1になった。1997年10月2日のモスクワ証券取引所上場50銘柄の平均株価は572ルーブルだったが、1998年10月6日には32ルーブルに急落した。

混沌とした「民主主義時代」の深い傷痕を言葉だけで表現するのはほぼ不可能だが、リーダーシップのスタイルや年齢、職歴、出身地など、エリツィンとほぼ正反対の人物が登場したことはもちろん偶然ではない。

プーチンの「弱肉強食」を信条とする妥協を許さない姿勢と、自国の利益のみを重視する「ゼロサム思考」はロシア的な精神と一致する。さらにソ連時代の行きすぎた行為を恥と思わず、ミハイル・ゴルバチョフやエリツィンの時代に撤去されたソ連時代の彫像を(文字どおり)台座に戻した。

「生き残り」の天才プーチンは、単に最近の伝統を強調するだけではなく、1000年以上に及ぶ長く輝かしい歴史を再定義してみせる。例えばウクライナ東部のドンバス地域をロシアの「心臓部」と呼び、帝国時代とのつながりを強調する。

人々がプーチンに共鳴する第2の要素には、ロシア人が感じている一般的な不安感、屈辱感が関連している。プーチンは国民のこうした感情を強力かつ見事に代弁する。

プーチンは、おそらく過去20年間の世界のどの指導者よりも自国民のことをよく理解している。友人のロシア人ジャーナリストは、「ロシア人の心の糸を正しく弾くことができる」と表現した。

ロシアは外部の世界に脅威を感じ、見下されているという感覚にとらわれている。プーチンは国民の擁護者と、ロシア人の傷ついた誇りを堂々と代弁する「桂冠詩人」の両方を演じているのだ。

ロシアの不安の根底には、地理的呪縛がある。確かにロシアの広大な国土は世界最大で、2位のカナダの約2倍だが、そのため国境を守るのは至難の業だ。東部の人口は隣国・中国の10分の1、南部も中央アジア諸国の3分の1にすぎない。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラン上空で米戦闘機撃墜、乗員1人を救助 対イラン

ビジネス

米3月雇用者数17.8万人増、過去15カ月で最多 

ワールド

米政権、「脱獄不能」アルカトラズ監獄再開へ予算 ア

ワールド

連邦資金「着服」巡り民主州中心に調査、トランプ氏署
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    中国は「アカデミズムの支配」を狙っている? 学術誌…
  • 8
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 9
    60年前に根絶した「肉食バエ」が再びアメリカに迫る.…
  • 10
    『ナイト・エージェント』主演ガブリエル・バッソが…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story