コラム

2024年大統領選、バイデンは立候補するのかしないのか

2022年09月21日(水)10時45分

今出馬を表明すると中間選挙で票が減る? Jonathan Ernst-REUTERS

<この時点でバイデンが次期大統領選に「出馬するかどうか白紙」と表明するのは、極めて不自然なこと>

アメリカで新たな大統領が選出された場合、当初から4年後の次の選挙を意識することになります。就任2年後の中間選挙で苦戦しても、その後は巻き返して「再選」を目指すというのが当然とされています。

ちなみに、再選にチャレンジして落選した大統領というのは、戦後で考えてみると意外に少なく、カーター、ブッシュ(父)、トランプの3人しかいません。現職が負けるというのも異例なら、そもそも現職が出馬断念に追い込まれるとか、予備選で負けるということも非常にまれです。

戦後の米政治史で、出馬断念に追い込まれた大統領は、リンドン・ジョンソンだけです。彼は、1963年にケネディ大統領が暗殺された時に、副大統領から昇格しましたが、その際にケネディから引き継いだ残りの任期が2年未満だったので、64年の選挙で勝った4年後の1968年にも出馬の権利がありました。ですが、ベトナム戦争の泥沼化の責任を取る格好で、出馬を辞退しました。

ですから、仮に一期目の大統領が、再選をかけた選挙に出ないで4年1期で引退するとなれば、これは戦後初であり、非常に珍しいことになります。

現在、ジョー・バイデン大統領の状況は、その瀬戸際と言えます。

高齢批判の深層心理

まず、世論調査の数字が危険信号となっています。支持率の低下は、ここへ来てインフレがやや鎮静化したので、42%前後で下げ止まっています。ですが、例えば、CNNの世論調査によれば民主党支持者の75%が「バイデン続投を望んでいない」などという数字が出ています。NPR(公共放送)の調査では、若者世代におけるバイデン大統領への積極的な支持は5%だけというデータもあります。

理由は何かというと、高齢批判です。大統領にとって厄介なのは、この「高齢批判」が二重構造になっているということです。

どういうことかというと、表面上では健康や判断力低下への不安があります。具体的には、大統領が自転車で転んだとか、コロナに感染して隔離されたなどというニュースが流れると、支持率は下降するわけです。ですが、若者層の声を総合すると、大統領に健康不安があるから心配という心理の奥には、世代が違いすぎて自分たちの声が届かないという強い不満があるというのです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミャンマーで総選挙投票開始、国軍系政党の勝利濃厚 

ワールド

米、中国の米企業制裁「強く反対」、台湾への圧力停止

ワールド

中国外相、タイ・カンボジア外相と会談へ 停戦合意を

ワールド

アングル:中国企業、希少木材や高級茶をトークン化 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 10
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story