コラム

テレワークが定着した今、米企業は社員を出勤させられるか?

2021年07月07日(水)16時00分

パンデミックを経て在宅勤務はアメリカで完全に定着した martinedoucet/iStock.

<「オフィスに戻れ」という指示が出た企業では、従業員からの反発も出ている>

バイデン大統領は、7月4日の独立記念日には「ウイルスからの独立」を祝おうと、この日までには、少なくとも1回のワクチン接種をアメリカの全人口の70%に対して実施するという目標設定をしていました。

当初は、1日に300万人などというハイペースでの接種が進められましたが、5月から6月にかけて接種のスピードは急減速し、結果的にはこの独立記念日の時点での接種率は67%でした。それでも、予定通り全米では大規模な花火大会が開催される一方で、連休ということもあって国内旅行の人出はパンデミック以降では、空前の規模となりました。

そうしたムードの中で、全米でコロナ関連の規制はほぼ解除に向かっています。ワクチン接種率の減速だけでなく、デルタ株の流行など心配な点は多くあるのですが、今回の花火大会を契機として「社会の再オープン」という雰囲気がどんどん拡大しています。

そこで問題となっているのが、リモート(テレワーク)勤務を継続するかどうかという選択です。

アメリカでは、コンピューター・ソフト関連、金融などを中心とした知的産業、そして全産業における事務(アドミ)機能については、2020年3月以降は現在まで、ほぼ100%が在宅勤務となっています。

在宅勤務が完全に普及

この在宅勤務ですが、すでに1年以上が経過する中で大きな問題は報告されていません。回線、ハード、ソフト、運用を通じたセキュリティの確保については、ほぼ完全に普及していますし、そもそもパンデミック以前からシリコンバレーなどでは50%在宅勤務というような企業も多かったのです。

アメリカの場合は、一人一人の役割分担が明確に「ジョブ・ディスクリプション(職務要件書)」で決められていますし、個別のタスクやプロジェクトの責任範囲、到達目標、スケジュールの管理も個人別であり、多くの場合はアプリで進捗管理がされます。

各企業が独自の仕事の進め方にこだわって、実務は対面での伝承を主とするなどということもありません。ですから、在宅で集中する方が、何かと無駄な時間の多いオフィスに出勤するよりも生産性が向上するというのは経営の常識になっています。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

衆院選きょう投開票、自民が終盤まで優勢 無党派層で

ワールド

イスラエル首相、トランプ氏と11日会談 イラン巡り

ビジネス

EXCLUSIVE-米FRB、年内1─2回の利下げ

ワールド

北朝鮮、2月下旬に党大会開催 5年に1度の重要会議
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 3
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本版独占試写会 60名様ご招待
  • 4
    韓国ダークツーリズムが変わる 日本統治時代から「南…
  • 5
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 6
    【台湾侵攻は実質不可能に】中国軍粛清で習近平体制…
  • 7
    心停止の8割は自宅で起きている──ドラマが広める危険…
  • 8
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 9
    日経平均5万4000円台でも東京ディズニー株は低迷...…
  • 10
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story