コラム

東京都議選の争点は、五輪とコロナだけでなく山のようにある

2021年06月30日(水)14時30分

五輪、コロナ後も東京都政には課題が山積 Issei Kato-REUTERS

<一極集中、少子高齢化、財政逼迫......今後の都政には待ったなしで対応を迫られる課題がいくつも控えている>

東京都議選が告示されました。開催予定が直前に迫った五輪への賛否、コロナ禍で疲弊する経済への救済措置など、短期的な政策に関して明確な民意を示すことができるのかというのは、1つの注目点だと思います。その一方で、多くの課題を抱えた大都市・東京には、今後の方向性に関する真剣な議論も必要ではないかと考えます。3点、問題提起をしたいと思います。

1点目は、東京一極集中をどうするのかという問題です。少なくとも東京の視点からすれば、一極集中を改善するというのは、東京の繁栄を削って経済活動を再度全国に分散することを意味しますから、基本的にメリットはありません。ですから、一極集中というのは東京都政の争点にはなりにくい問題でした。

ですが、これは東京に人口が集中することが東京の経済活動と税収に「プラス」となるという前提があったからです。しかし、今後の東京は巨大な単身世帯の塊が高齢化し、膨大な引退世代を抱える「コスト負担」型の自治体になっていきます。

けれども、そうなってから、高齢人口を疲弊した地方に分散するのは難しいでしょう。ということは、今から地方に経済活動を分散して地方の活力を維持しておき、地方も東京も存続できる政策を考える必要があるのではないでしょうか。国にそうした問題意識が希薄であるのなら、今から東京が動くべきです。

子育て世代が背負う苦難

2点目は、少子化の問題です。よく言われる議論として、東京は極端な少子化都市なので出産適齢期の女性人口が東京に流入すると、国としての少子化が加速するという理屈があります。ですが、東京の視点から見れば、人々は子どもが欲しくないから東京に来るのではなく、東京独自の要因があって、その結果として子どもが少なくなっているわけです。

具体的には、長時間労働、物価高、公教育が問題を抱える中での塾や私立校のコスト、そして保育事情、住宅事情など、構造的な問題が積み重なっています。少子化は結果に過ぎず、それ以前に東京の子育て世代が背負っている苦難に関しての対策は待ったなしの状況ではないでしょうか。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

原油先物が再び100ドル突破、米のホルムズ海峡封鎖

ワールド

ペルー大統領選、ケイコ氏が得票率16.6%でリード

ビジネス

米財政赤字、3月は2%増の1640億ドル イラン戦

ワールド

ハンガリーで16年ぶり政権交代、オルバン氏与党敗北
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    新しいアメリカンドリームは「国外移住」...5人に1人が海外を希望する時代
  • 2
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相場で人気の優良株から売られる落とし穴
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 5
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 6
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 7
    中国が恐れる「経済ドミノ」
  • 8
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 9
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 10
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 8
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story