コラム

育児休業で住宅ローン審査が不利になるのは深刻な問題

2021年03月16日(火)14時00分

抜本的な解決は、アメリカのようにローンの与信は、個人のクレジット履歴だけで判断するという方法です。勤務先が大企業であるかどうか、年収がいくらかという情報は聞くにしても、審査の根本は「その人の過去のクレジット履歴のみ」とすることで、審査に客観性が確保できるからです。

アメリカの場合は、住宅ローンの審査において、人種差別のあった時代があり、これを克服するために「申込者の属性」ではなく「過去のクレジット履歴」という客観性を重視するシステムを作り上げ、その上で債権も自由に市場で流通するようにしたのです。もちろん、欠点もあります。貸し出しが加熱する中で起きたのがリーマンショックの原因となった「サブ・プライム」ローンでした。

日本では、依然として外国人に対して賃貸マーケットが閉鎖的だったりしますが、この問題も含めて、やがて終身雇用制が崩れていくことも視野に入れながら、「勤務先の信用イコール個人の信用」であるとか、「個人の属性が信用」というシステムには抜本的な見直しが迫られていると思います。

それはともかく、この育休取得によって住宅ローン審査が不利になるという問題は待ったなしです。直ちに制度的な枠を適用する必要があります。法改正に時間がかかるようなら、銀行協会、地銀協会、第二地銀協会が連合で申し合わせをするなどの対応ができないものでしょうか。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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