- HOME
- コラム
- プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
- 教育現場にケンカを売るトランプ、その目的は?
教育現場にケンカを売るトランプ、その目的は?
トランプが大統領選を意識しているのは間違いないが Kevin Lamarque-REUTERS
<全米の学校に9月からの授業再開を強要したり、リモート授業を受ける外国人留学生を摘発対象にしたりと、いきなり強硬姿勢に>
南部と中西部におけるコロナ危機の拡大を反映して、世論調査では民主党のバイデン候補に大きくリードを許しているトランプ大統領ですが、今週6日から8日にかけて、突如「教育現場への攻撃」を始めました。
1つは全国の小中高に対して「学校を必ず9月に再開せよ」というプレッシャーです。感染拡大の深刻だった東北部、現在深刻な状況の南部と中西部、それぞれに事情は違いますが、9月からの学校の再開については各州、そして各市町村の教育委員会が慎重な検討を続けています。
それにもかかわらず、大統領は一方的に「学校を再開せよ」と宣言、しかも「再開しないと政府の補助金を打ち切る」というツイートをしました。さらに、学校の再開にあたって注意を払うべき内容を記した「CDC(疾病予防管理センター)」によるガイドラインについて「厳格過ぎるし、カネがかかるので反対」としています。
大統領によるプレッシャー作戦ですが、効果は始めから限られています。まず、アメリカの公立学校は市町村単位の独立採算制で、連邦政府からの補助金の割合は数%に過ぎません。補助金カットで脅したとしても、その金額は大したことはないのです。また、各学区における現場の規則についても、学区ごとに独立した教育委員会に決定権があり、またその教育委員会を構成する教育委員は公選制になっている州が多いのです。
ですからいくら大統領が吠えたり脅したりしても、できることは限られています。また、8日の昼にはペンス副大統領、CDC長官、コロナ専門家チーム、デボス教育長官などが、この件で記者会見していましたが、ペンス副大統領は大統領の過激な発言を、「より安全により多くの学校をオープンさせたい」という至極まっとうな話に「すり替える」という「いつものパターン」に持ち込もうとしていました。ですので、この件は各州、各市町村の判断に委ねられるなかで、大騒動にはならないと思われます。
完全リモート授業はアウト
問題は、もう1つの大学をターゲットとした「留学生排除作戦」です。これは、大統領が思いつきでツイートしたというレベルのものではなく、悪名高いICE(移民関税執行局)による措置としてすでに指示が出ています。
具体的には、国外から留学ビザ(Fビザ)で入国している学生の所属する大学が、「100%リモート授業」を行っている場合は、該当する学生はICEによる摘発と国外追放の対象となるという措置です。
このICEというのは特にトランプ政権になってから不法移民の摘発を強化しており、ただでさえ悪名の高い組織です。そのICEが留学生をターゲットにするということで、各大学には衝撃が広がっています。ハーバードとMITは早速この措置を停止することを目的とした訴訟を起こしました。またプリンストン大学のアイズグルーバー学長は、異例なまでに激しい言葉を連ねたメッセージを発表して、この政策に対して「断固戦う」と宣言しています。
<関連記事:トランプ、大学入試で替え玉受験? めいが暴露本で明かす>
環境活動家のロバート・ケネディJr.は本当にマックを食べたのか? 2024.11.20
アメリカのZ世代はなぜトランプ支持に流れたのか 2024.11.13
第二次トランプ政権はどこへ向かうのか? 2024.11.07
日本の安倍政権と同様に、トランプを支えるのは生活に余裕がある「保守浮動票」 2024.10.30
米大統領選、最終盤に揺れ動く有権者の心理の行方は? 2024.10.23
大谷翔平効果か......ワールドシリーズのチケットが異常高騰 2024.10.16
米社会の移民「ペット食い」デマ拡散と、分断のメカニズム 2024.10.09