- HOME
- コラム
- プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
- 閣僚がはんこ産業を代表して「ペーパーレス」を遅らせ…
閣僚がはんこ産業を代表して「ペーパーレス」を遅らせるな
ですが、一般的に印影には効力があるとされています。実印、つまり印鑑登録をされた印の場合は、認証レベルが高いイメージがありますが、これも印鑑証明書さえ入手して、その印影と同一の印影を押してあれば、仮に悪意の第三者が作成した偽造書類であっても見破ることはできません。
もちろん、こうした認証レベルの問題ではサインも特に優れたわけではありませんが、サインの場合は「それ自体が手書きで揺れのあるもの」だという前提で、他に認証を補完する仕組みがあります。例えばウィットネス(立会人)の署名や、ノタリー(公証)の仕組みなどです。
印鑑が問題なのは、正確に捺印がされていると、ビジュアル的に「完璧」であることでどうしても心理的に「ないはずの認証レベル」を感じてしまうということ、その結果として悪用が可能になってしまうということがあります。
これは心理的な問題だけでなく、実務的な問題でもあります。例えば、宅配便の受け取りには印鑑が必要で、その場合、社会通念上は「シャチハタでもOK」とされています。ですから、極論を言えば鈴木さん宛の宅配を横取りしようと思えば、鈴木というシャチハタ印を数百円で購入して、鈴木さん宅の玄関の周辺に潜んでいれば出来てしまいます。
ですが、宅配業者としては、シャチハタ印の認証レベルが低いことは承知の上で、それでも一定のレベルの認証ツールとして機能している、つまりコストに見合う低い認証でOKとしているわけです。この場合に、サインが主流になってしまうと、仮に横取り事件の捜査や裁判となった場合に、形式要件として真贋チェックの世界に入っていくと認証の正当性を証明するのも否定するのもコストがかかってしまうわけです。
いずれにしても、印鑑というのはビジュアル的に完結してしまう反面で、認証レベルは低いツールです。こうしたもので「良し」としているようでは、世界中にハッキングや成りすましを生業とする悪意が跋扈する21世紀におけるセキュリティ対策は進みません。
とにかく、竹本大臣にははんこ業界全体を説得して、政府も民間もペーパーレス、脱はんこ時代へと向かうように、その結果としてホワイトカラーの事務効率がOECD参加国中最低レベルという悲惨な状態から脱するように、尽力することを望みます。
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
環境活動家のロバート・ケネディJr.は本当にマックを食べたのか? 2024.11.20
アメリカのZ世代はなぜトランプ支持に流れたのか 2024.11.13
第二次トランプ政権はどこへ向かうのか? 2024.11.07
日本の安倍政権と同様に、トランプを支えるのは生活に余裕がある「保守浮動票」 2024.10.30
米大統領選、最終盤に揺れ動く有権者の心理の行方は? 2024.10.23
大谷翔平効果か......ワールドシリーズのチケットが異常高騰 2024.10.16
米社会の移民「ペット食い」デマ拡散と、分断のメカニズム 2024.10.09