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【写真特集】霧の中にたたずむ気候変動の罪なき犠牲者
THE DAY MAY BREAK
Photographs by NICK BRANDT
「アリス、スタンリーと ナジン」(ケニア、2020)
<気候変動の最大の被害者は、地球環境にわずかな影響しか及ぼさない人々や野生動物であるという不条理>
世界は今、各地で気候変動が原因の大規模な山火事や洪水、記録的な熱波や干ばつに見舞われている。イギリスの写真家ニック・ブラントは、気候変動で最も生活と生命を脅かされる人々と野生動物を、一緒の写真に収めるプロジェクトを開始した。
地球規模の環境破壊を告発する最初の写真集として今年発刊された『The Day May Break』でブラントは、自然環境が失われつつある現状を「霧」を使って象徴的に表現した。人々と動物は同じ霧の中にたたずむ。人間も動物も等しく、地球という小さな惑星に暮らす住民だからだ。
被写体となった野生動物は、いずれもケニアやジンバブエで保護された動物たち。動物たちは生息域の減少や密猟、有毒物の摂取などに苦しめられ、二度と自然の中に戻ることはできない。
一方、被写体の人々は、その多くが何年も続く干ばつで土地を追われた。サイクロンで家を破壊されたり、洪水でわが子を失った人もいる。
ブラントは記す。「地球環境にわずかな影響しか及ぼさない人々が、気候変動の最大の被害者であることは、残酷な皮肉だ」
<冒頭写真の説明>
かつてはアフリカ中部全体に生息していたキタシロサイだが、密猟によって個体数は激減。ナジン(左)は生き残った2頭のうちの1頭だ。アリスとスタンリーの夫婦はケニア中部で暮らしていたが2017年の洪水で家を失った。現在、夫は電気技師、妻は洗濯業を生業にしている
「リチャードとオクラ」(ジンバブエ、2020)カンムリクマタカのオクラは、ジンバブエのクインバシリ野鳥公園で保護された。森林破壊でカンムリクマタカの生息域も急速に失われている。ジンバブエ東部に住むリチャードは、かつてはトウモロコシ農家だったが2010年以降の干ばつで生計を立てるのが難しくなっている
「ザイナブ、その母ミリアムとフリーダ」(ケニア、2020)メスのクーズー(ウシ科の動物)のフリーダは、2018年にオルジョギ動物保護区で保護された。母親は密猟者に殺された可能性が高い。ミリアムと娘のザイナブは、17年の洪水で家が流された。夫は2人を残して家を去り、ミリアムは今ビール工場で働いている
「レジーナとジャック、リーバイとディーゼル」(ジンバブエ、2020)チーターのディーゼルとリーバイは生後6週間で動物保護区に引き取られた。生息地域の減少でチーターの個体数は激減している。首都ハラレ近郊に住むレジーナとジャックは農業で生計を立ててきたが、干ばつで水が不足し、今は生活支援に頼らざるを得ない
「ギスイとキマンジョ」(ケニア、2020)ケニア中部に住んでいたギスイは干ばつで農業ができなくなり、今は歩くのが困難で仕事に就けない。シマウマのキマンジョは、生後間もなくケニアのオルジョギ動物保護区に保護された。母親はおそらく密猟者に殺されただろうという
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