コラム

Black Lives Matter、日本人が知らないデモ拡大の4つの要因

2020年06月09日(火)17時30分

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抗議デモは全米に広がった(カリフォルニア州ロサンゼルス) PATRICK T. FALLON-REUTERS

警察が肌の色だけで疑うことはracial profiling( 犯人の特徴を「人種的に」推論すること)という、法律でも禁じられている間違った取り締まり方。だが問題視されてから何年たっても、これはなくならない。同じような軽犯罪で通報された場合、黒人は白人の倍ぐらいの確率で逮捕される。使用率はあまり変わらないのに、マリフアナ保持容疑で逮捕される確率は黒人が白人より約4倍高い。黒人は白人の約5倍の率で麻薬関係の犯罪で投獄される。しかも、それが「冤罪」である割合が白人のおよそ12倍!

デモ拡大の4つの要因

殺人の冤罪も7倍多い。イメージが先行することは実害にもつながっているのだ。大阪人は「みんな面白い」と思われるのもつらいと聞くけど、「みんな犯罪者」と思われるほうがよっぽど怖い。

職務質問、逮捕、投獄、殺害。普段からそんなことをされている黒人たちは、警察や司法制度に対する怒りが常に沸点間際に来ていてもおかしくない。だが、今回のような規模の爆発は珍しい。

抗議デモは全国600以上の都市で行われている。事件を起こした4人の警察官が全員逮捕、訴追されても反発は収まらない。(新型コロナウイルス対策の外出制限が解けたばかりなのに)外出制限が発令されても、1万1000人以上が逮捕されても、警察や参加者を含め18人が死亡しても、各地のデモは続く。ごく一部の人による略奪や放火を伴う暴動ももちろん起きている。なぜこんなことに?

要因は主に4つ考えられる。1つは、事件自体のむごさ(暴力描写をします。気になる方は以下の2段落は飛ばしてください)。ジョージ・フロイド(46)が食料品店で20ドルの偽札を使おうとしていると疑った店員が、警察に通報。4人の警官が現場に駆け付け、フロイドを乗っていた車の運転席から引きずり降ろし、後ろ手に手錠を掛けてパトカーに乗せようとした。しかし後部座席に1回乗せてから、なぜか反対側のドアからまた引きずり降ろす。その後、白人の警官1人が路上にうつぶせになったフロイドの首の上に膝を乗せ、全体重をかけて地面に押さえ付ける。

フロイドは最初、「お願い! 息ができない!」と苦しんでいたが、数分たつと全く動かなくなる。通行人が「動いていない!」と注意しても、脈拍がなくなっても、救急隊員が来ても、9分近い間、警官はずっとフロイドの首に乗ったままで窒息死させたとみられる。

実に残忍な事件の一部始終を通行人が携帯電話で撮影し、フェイスブックに動画をアップした。これが2つ目の要因。証拠映像がはっきりしていて、一気にSNSで広がった。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

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国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

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