小幡 績 転機の日本経済
日本の政治において政策はまったく重要でない
自民党総裁に選出された岸田文雄は高市早苗を政調会長に選んだ Du Xiaoyi/REUTERS
<政策重視にそぐわない岸田新総裁の党人事。いつものことだ。有権者がイメージだけでリーダーを選ぶ国の政治の姿だ>
これは日本に限ったことではないが、日本が特に顕著だ。
こういうと、自称有識者、あるいは若い世代でいえば勘違い意識高い系の人々は、日本批判を行い、欧米に習えというだろう。
違う。日本がもっとも進んでいて(先に退廃していて)、欧米は後を追ってきているのだ。
まあそれはともかく、岸田新体制でも、改めてそれが明示的に現れた。
高市氏の処遇は、党の政調会長、きちんといえば、政務調査会長である。
高市氏を重要ポストで厚遇しなければならない。党の四役のどれかである。しかし、重要なポストは任せられないから、政調会長なら、まあいいか、ということである。
幹事長、選対委員長はありえないし、総務会長は重要だ。だから、政調会長なのである。
しかし、政策に関していえば、岸田氏と高市氏は水と油に近い。極右とかなりの左である。高市氏が政策に影響力を持てば、岸田氏のやりたい(少なくとも総裁選で打ち出した)政策はまったく実現できないだろう。
でも、いいのである。
政策はどうでもいいからだ。
選挙に政策は関係ない。
イメージがすべてである。岸田氏はいい人そうだ。菅氏と違って、やさしく、人の話を聞いてくれる。なら、まあいいか。
ということで、総選挙では無難に勝つだろう。
政策よりばら撒き合戦
これは自民党に限ったことではない。野党も同じである。
立憲民主党のアベノミクスの検証の報告書が2枚に過ぎなかったことを揶揄する議論が多かったが、真剣な政策の評価を国会議員の勉強会でできるはずもなく、そもそも議員たちだけでなく、有権者も誰も期待していないのである。アベノミクスに不満のあった人は、それをはっきりと批判してくれればいいのであって、それがはっきりしていればよい。
具体的な政策論争とは、選挙においては、単なるばら撒き合戦である。さらに、ばら撒き合戦で旗色が悪いと思えば、敵の評判の良いばら撒きを丸呑みして、さらにちょっとだけプラスアルファをつければいいだけなのである。
この習慣を批判しても始まらない。
この戦術は、過去の選挙において、非常に効果的であったから、年々、与党も野党も、この戦術を過激化してぶつけ合っているのである。
政策を重要だと思っていないのは、政治家ではなく、有権者なのである。
総理は感じのいい人であればそれでいい、と思っている有権者たちは、政策など興味があるはずがないのである。
*この記事は「小幡績PhDの行動ファイナンス投資日記」からの転載です
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