コラム

米物価上昇が意味すること

2021年05月13日(木)11時15分
ニューヨーク証券取引所

アメリカ株は3日続落した(ニューヨーク証券取引所) Brendan McDermid-REUTERS

<為替が円高に向かえば日本国債売りはまだ先になるが、さもなくば......>

米国株は3日連続で下落。日本株も同じだが、世界的な株安だ。

そうはいっても、これまで散々上がったから、このくらいの下げ自体はなんでもないのだが、昨日の米国の物価指数が大幅上昇で、話は異なっている。

一時的な要因もあるから、1か月だけで、大インフレ時代がやってきた、とは言えないが、インフレの勢いのレベルはぶれがあるだろうが、インフレになっていることは間違いがない。

問題は、むしろ、これでも金融緩和を縮小しないことで、すぐに緩和拡大幅を縮小する必要がある。しかし、それを今しないのはわかっている。議論すらしていない、というふりをし続けるかもしれない。

それは大きなリスクで、次にさらなる物価上昇データが出ると、投機家たちは、インフレシナリオで仕掛けてくるだろう。

その時に、株価は水準は高すぎるし、後は売りタイミングだけという投資家ばかりだ、という状況が重要で、インフレが実際はそれほどではないと後で確認されても、そのときではもう遅く、売り仕掛けは成功した後で、トレンドは変わってしまっているだろう。

債券市場がまず反応して、株式市場は反応しないふりをして売り場を作り、その後大幅下落し、流れは加速するだろう。債券市場は相対的には理屈で動くから、インフレの程度も大したことないし、FEDが急激に方向転換もせずに徐々に動くことはわかっているから、その後は、冷静に反応するだろうが、株式市場は流れができたら止まらないはずなので、乱高下を繰り返しながら下がっていくだろう。

最悪はトリプル安

為替は、長期金利上昇という理屈から言っても、株式市場のリスクオフというセンチメントからいっても、ドル高方向なので、とりあえずはドル高で突き進むだろう。円は、長期金利は下落、景気は先進国で回復最遅行で、弱い反面、リスクオフの円高もあり、日本株の売り仕掛けとともに、円高も仕掛けられるリスクはあるので、どちらに向くかわからない。

しかし、円高になるようなら、まだ日本国債売り浴びせにはならないので、最悪の事態は先だ。

最悪なのは、株安、円安、債券安のトリプル安だ。

海外投機家が仕掛けるとすれば、この順番なので、注意が必要なのは、とりあえず、株式市場だ。そして、円安が大幅に進んだら、もうすでに日本は取り返しがつかない状況に陥っているということになる。

*この記事は「小幡績PhDの行動ファイナンス投資日記」からの転載です

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=上昇、米中首脳会談をホワイトハウスが

ビジネス

米フォード、通年利益見通しを引き下げ アルミ工場火

ワールド

米中首脳会談、30日に韓国で トランプ氏「皆が満足

ビジネス

NY外為市場=ドル対円で上昇、翌日の米CPIに注目
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 2
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 3
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 4
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 5
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 6
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 7
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 8
    「石炭の時代は終わった」南アジア4カ国で進む、知ら…
  • 9
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 10
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 10
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story