コラム

緊急事態宣言とは何だったのか?

2021年03月18日(木)16時06分
緊急事態宣言の延長を発表する菅義偉首相 新型コロナウイルス

3月5日、緊急事態宣言の2週間延長を発表した菅首相 Yuichi Yamazaki/REUTERS

<政府は今日、1都3県の緊急事態宣言を完全解除することを正式決定する。専門家も了承した。いったい緊急事態宣言とは何だったのか?>

国民への脅しだ。

脅しは一回しか効かない。

2020年の脅しは効いたが、2度目はなかった。

新規感染者数が一時的に減ったのは東京2000人という数字に国民がびっくりしたからで、かの首相もそうおっしゃっていた。

びっくりしました、と。

貴方がびっくりしてどうするんですか。

21日に解除できるなら、3月の2週間の延長はいかなる意味でも、意味がないし、失敗だ。

延長を決めた3月5日時点では、新規陽性判明者数は減少傾向にあり、ベッドなどの使用率は低下傾向にあり、重症者数も低下傾向にあったる。トレンドが下がっており、かつこれらの指標は遅行指標だから、この先も下がることは明確であり、かつ数字を見極める必要があるとすれば、このトレンドが止まるか、反転するかしないのかを最終確認するだけのことであり、2週間ではそれ以上に新たなよい情報は入りようがなかったのである。

そして今、指標は最悪。下げ止まりどころか、東京では反転が明確になった。

意味不明である。

今回の3月の延長は、われわれから見れば、まったくの無意味だが、彼らにとって、意味はある。

アリバイ作りだ。

やるべきことはやった。

政権の緊急事態が去ったから

そして、国民の不満を抑えるためであり、知事との対決で、国民を知事側に回らせないための対応だったに過ぎない。

コロナ自体には無関係だし、誰も気にしていない。

コロナがどうなってもかまわない。国民から、あるいは有権者から非難されなければいいのだ。

国民の関心は新規陽性判明者数から、ワクチンに移っている。

だから、政治家たちにとっても、緊急事態宣言はもういらないし、感染者数が増えようが何しようが、気にしないのだ。

ただ、はっきりしたのは、緊急事態宣言は、コロナにとっては効果ゼロ。国民生活にはマイナス。経済にももちろん大幅マイナス。百害あって一理なしだ。

むしろ、緊急事態宣言では効果がないから、これを外して、より強力な手段を検討しているという声まで聞こえる。

なんだそりゃ。

それがあるなら、12月にそれをやらないと。

だから、緊急事態宣言とは、コロナが緊急事態であるかどうかとは無関係なのだ。

緊急事態宣言とは、政権が緊急事態に陥ったときに発する宣言なのだ、ということを国民も理解する必要がある。

私たちがピンチです、という政権緊急事態宣言なのだ。

みな、政権を叩くのも飽きたようだからから、緊急事態宣言も一旦取り下げるだけのことだ。

*この記事は「小幡績PhDの行動ファイナンス投資日記」の記事を一部修正したものです。
よって、解除。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

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