最新記事
シリーズ日本再発見

中国から「トイレ革命交流団」もやって来る、トイレ先進国・日本の最新事情

2020年01月31日(金)17時15分
高野智宏

chingyunsong-iStock.

<外国人が称賛する温水洗浄便座だけじゃない! サービス面でもさらなる「トイレ革命」が進行中の日本。衛生状態が悪い国のトイレ事情改善にも貢献し始めている>

TOTOが温水洗浄便座「ウォシュレット」を発売してから40年。2018年の消費動向調査によれば、今や一般家庭における温水洗浄便座の普及率は8割を超え、デパートなどの商業施設はもちろん、役所などの公共施設においても、温水洗浄便座トイレが当たり前の存在となっている。

すでに知られるところだが、日本は世界に冠たる「トイレ先進国」だ。

機能の進化も目覚ましい。便座とシャワーの温度調整はもちろんのこと、フタの自動開閉や脱臭、除菌に消臭機能も標準搭載。また、各社の最新モデルでは、防汚性の高い素材を開発し便器に採用することで汚れを防ぐなど、進化の歩みを止めることはない。

トイレの進化は便器だけにあらず。公衆トイレなどを研究対象とし、トイレを切り口に健康的な生活を啓蒙している日本トイレ研究所の代表理事、加藤篤氏は、トイレの「空室情報提供サービス」に注目しているという。

トイレの空室情報提供サービスとは、センサーなどから取得した情報によりトイレが使用中か空室かを、スマートフォンなどでリアルタムに確認できるサービスのこと。ハードでなくソフトの分野で、さらなる「トイレ改革」が進行中というわけだ。

現在、東京メトロが公式アプリで上野駅と溜池山王駅のトイレ空室情報を、小田急電鉄も公式アプリで新宿駅のトイレの情報を提供するなど、東京を中心に公共施設や商業施設で導入され始めている。東京駅に直結する大丸百貨店では、自社のウェブサイトでトイレの空室状況を表示し好評を得ている(店内飲食店の空席情報も表示)。

オフィスビルでも同様だ。

「駅や百貨店以上に、トイレの数が十分に用意されていないのがオフィスビルです」と、加藤氏は言う。「トイレを利用するのは昼食後など多くの人が同じ時間帯になることが多い。このアプリケーションを導入することで、オフィスにおける『トイレ難民』問題が解消され、結果的に業務の効率化も図ることができるのではないでしょうか」

「消滅可能性都市」豊島区のトイレ改革

「サービスには無縁」というイメージのある行政だが、このトイレ改革に熱心な自治体もある。例えば都内屈指の繁華街・池袋を擁する豊島区だ。

豊島区は、日本創成会議が2014年に発表した「2040年までに消滅する可能性のある市町村」のひとつに東京23区から唯一選ばれてしまった。

「消滅可能性都市」に選ばれた市町村の多くは、少子高齢化で進む過疎化により自治体の行財政が破綻することがその理由だったが、実は豊島区も人口は減少の一途を辿っていた。池袋などの賑わいは、埼玉県などから来る人たちにもたらされたものが大半なのだ。

そんな苦況に面した区が考案したのが、人口増加へのキーとなる若い女性への訴求であり、対策の柱のひとつがトイレ改革だった。区はこれを「TPTP(Toshima Public Toilet Project)」と命名。暗い、汚い、使いづらいと以前から区民より声の上がっていた公園トイレ計85カ所の全面改修を決定した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今

ワールド

APEC首脳会議、共同宣言採択し閉幕 多国間主義や

ワールド

アングル:歴史的美術品の盗難防げ、「宝石の指紋」を
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中